甘い気怠さの中、目を覚ました。
 朝日を受けてクリスタルの照明がプリズムを寝室全体に落としていて、そのきらびやかな光景に一瞬まだ夢の中にいるのかと戸惑う。
 自宅のものとは違うさらりとしたシーツの質感を裸体に感じて、昨夜の記憶がよみがえった。

 ――甘い甘い、一夜の夢。

 一人で寝るにはあまりにも広すぎるベッドに肌寒さを感じて、涙がにじむ。
 気を失うように眠りについた瞬間には、確かなぬくもりがこのすぐ傍にあったのに、今はもうない。
 寝返りを打って彼の体温を探してみても、シーツは冷え切っていた。

 ――うたかたの夢。

 こんな夢、この先一生見ることなんて叶わない。
 だから、夢で構わない。
 そう思って覚悟してここまで来たのに、あまりにも甘い夢が今も舌の上に残って、薄く溶けたキャンディーみたいに私を傷つける。
 雲みたいにやわらかなベッドがまだしばらく夢の名残に身をゆだねようと私を誘う。
 傷ついた心を守るように、私は丸くなって再び目を閉じた。