○金曜日、裏庭、5時
遥は、図書委員の女の子に頼まれ放課後の5時まで図書室に残っていた。
女の子『今日彼氏とデートする予定あるから委員長の遥ちゃんに、当番変わって欲しいんだけど……ダメかな?』
遥『別に予定無いしいいよ……っ』
女の子『遥ちゃんありがと〜!じゃあお願いねっ』
ニコッと笑って去っていった女の子の背中を見つめた後、当番の仕事を終わらせた。
まだ夏が遠いから、暗くなるのが早い。
夕日の光が図書室の窓から入ってきている。
そんな様子をボーッと眺めていた遥は、図書室に入ってきた1人の男子生徒……、王子様みたいと騒がれている有名な先輩に呼び出された。
その先輩は青柳翔アオヤギカケルという名前で、男子とあまり仲良くしていない遥でも、名前を知っていた……。
そうして今に至る。
翔「いきなり呼び出してごめんね。1つ聞きたかったんだけど、一之瀬と付き合ってるって本当?」
不安そうに聞いてきた翔に、遥は焦り気味で答える。
遥「い、いいえ!付き合っていません!私なんかじゃ釣り合いません……っ」
なんでこんなことを聞いているのか分からず、とりあえず付き合っていることだけ否定した。
ぶわっと強い風が吹いた時、翔は一言小さく呟いた。
翔「じゃあ俺にもチャンスあるよね?」
遥「えっ……?」
遥(風の音でよく聞こえなかった……)
翔「そうなんだ……。俺、雪乃さんのこと気になってるんだ。だから、これからは意識して欲しいんだ」
翔の顔が赤くなっていき、翔は思わず顔を背けた。
遥は言っている事が理解出来ずに、困惑していた。
遥(気になっているってどういうこと……!?私この人の事名前しか知らないし、意識するって……?)
なにか返事をしないと、とそんな焦りが出てきた遥は返事をすることにした。
遥「意識する……ってどういう事ですか?私、青柳先輩のことよく知らないですし……」
翔「雪乃さんは鈍感だね。雪乃さんの事が好きだから、俺と話す時は意識してってことだよ」
優しく微笑みながらそう言った翔に、遥の胸はドキッとした。
遥(あんなに真っ直ぐ告白されるなんて……っ!しかもあの微笑みは反則すぎて無理だよ……)
さっきまで翔が赤かったのに、次は遥が赤くなる番だった。
かぁっと赤くなっていく顔をみて、翔は笑った。
翔「雪乃さん顔赤すぎ。可愛いね」
翔の手が遥の顔に近づいていく。
そうして頬に手を優しく添えられて、右手で髪を1束すくった。
遥(いきなり……何?早く離して……)
遥「は、離してくださいっ……」
遥の声を聞かずに、翔は独り言を呟いていた。
翔「雪乃さんが……俺のものだったらいいのにな。ずっと一緒に居たい、閉じ込めたいくらいに可愛いな……」
意味深に呟いたその言葉を聞いて、遥はゾクッとした。
遥(何、怖い……っ!誰か助けて……)
そう思った時、後ろから叫び声が聞こえた。
俊斗「遥っ!」
それは、私の大好きな人の声。
叫び声が聞こえたと同時に、手が離された。
そのまま一之瀬さんの所へ走って駆け寄った。
一之瀬さんは私を背中の後ろに隠して、こう言った。
俊斗「遥に何した?答えろよ翔」
サラリと名前呼びした俊斗に驚く遥。
俊斗の後ろに立っているので、表情が分からない。
でも、いつも遥の前では甘い雰囲気をしている俊斗の威圧的な雰囲気は異常で、怒っていることが分かった。
遥(名前呼び……?友達なのかな?しかまいつもよりオーラが……)
遥は恐怖でどうにかなりそうだった為、思わず俊斗の服を摘んだ。
目にうっすらと涙が浮かんでいる遥を、俊斗はちらりとみて、頭をぽんぽんと撫でた。
俊斗「大丈夫だから、遥は俺が守る。だから安心して守られてろ」
そんな甘い言葉を並べる俊斗に、遥の心臓は限界を迎えそうになっていた。
俊斗の背中の後ろで、両手で顔を抑える遥。
遥(好きな人にこんなこと言われたら、耐えれないよ……っ!明日から同居なのにどうしよう)
ずっとドキドキと高鳴る胸。
翔「ははっ……俊斗が一人の女に懐くなんてな」
俊斗「るせぇよ……遥に何しようとしてたんだ?」
翔「何って……キスだけど?幼稚園の時はお前より俺の方がモテてたよな」
俊斗「関係ねぇだろ。遥に何キスしようとしてんだよ!汚れるだろうが」
翔「俺を汚いものとして扱うのは辞めてもらえる?一応俺は先輩なんだけど」
二人の会話を聞いているうちに、二人が幼馴染であることがわかった。
遥(先輩なのにタメ口だし、親友みたいに言い争ってるからよほど仲がいいんだろう)
もし同じ学校に結衣ちゃんが居たら……私も2人みたいに言い争ったり、沢山遊べるのかなとか、結衣ちゃんに会いたいなとか幼い頃を思い出している遥。
遥の幼い頃の回想シーン。
遥4歳、結衣7歳だと言うことを表す絵。
二人の喧嘩。
結衣「やだやだ!私がこっちのネックレス付けるの!」
遥「私もピンクのネックレスがいい……!」
2人でピンクのネックレスを取り合っている時、結衣の弟が話に入ってきた。
その時、5歳だった弟は大人びていた。
弟「結衣姉さんうるさいよ。はるが困ってんじゃん」
結衣の弟は、結衣よりもよほど大人びた表情。
2人でじっと結衣の弟の言葉を聞いた。
その後「ごめんね」と言い合って終わったこの喧嘩。
これは全部……あの時のしーくんのお陰。
しーくんは結衣ちゃんの弟のあだ名。
しーくんと結衣ちゃんと私は、よく公園で遊んでいた。
しーくんはいつも公園のブランコに座って本を読んでいたけれど。
そんなしーくんと遊べた時間は短かった。
ある時、結衣ちゃん達が引越しをすることを聞いた。
引越しする前に結衣ちゃんと会いたかったのに、親に言っても会わせて貰えなかった。
遥「ねぇお母さん……っ!結衣ちゃんに会わせて!」
母「ダメよ。結衣ちゃんは忙しいんだから会っちゃダメ!」
泣きながらどれだけお願いしても、結局会わせて貰えなかった。
それから一切会うことなく、今に至る。
現代。
遥(結衣ちゃん元気にしてるかな?彼氏さんとか出来たのかな……?結衣ちゃんは今、19歳くらいだから大人っぽいんだろうな)
結衣ちゃんの事で頭が埋め尽くされていた時、俊斗は振り返った。
遥「え?」
俊斗「遥、帰るか」
帰るってもう話し終わったのかな、そう不思議そうな顔で俊斗を見つめる。
俊斗「話終わったから帰ろう。家まで送る」
サラリと家まで送ると言われドキッと胸が鳴る遥。
遥「は、はい……!」
歩いていく俊斗の背中を小走りで追いかけて、隣に並ぶ。
身長差は結構あって、俊斗からみたら遥は必然的に上目遣いになってしまう。
いきなり顔が赤くなった俊斗を見て、遥は熱でもあるのかなと思った。
遥「熱でもあるんですか?」
心底心配しているような瞳と顔。
顔を赤らめながら返答する俊斗。
俊斗「いや、熱は無い。ただ遥が可愛かっただけだ」
遥「え?私は可愛くないですよ」
遥(世間一般的に見ても私は絶対に可愛いとは言えない。クラスのみんなの方が絶対に可愛いはずなのに……)
すぐに可愛い、可愛いと言う俊斗にもう冗談だろうと呆れ気味になってきた遥。
冗談だと分かっていてもドキドキとなり続ける胸。
胸を抑えながらカバンを取りに教室へ歩く。
並んで歩いていると、色んな人からの視線を感じる。
チラチラと見て、ひそひそとした声。
女の子だけではなく、男の子のすごい視線。
そんな時、俊斗は遥の方を向きこう言った。
俊斗「女なんか気にすんなよ」
遥「はい……っ」
遥は自分のことを気にしてくれた俊斗にドキッとした。
門まで行って俊斗の車に乗った。
遥「お邪魔します」
遥(やっぱり居心地が悪い……。高級車に乗れるなんて贅沢すぎる)
自分には勿体ないと思ってしまって、遥はギュッと目を瞑った。
そんな遥を見て、心配そうな顔をした俊斗は遥の頭に手を乗せた。
俊斗「これから一緒に住むんだし、車で緊張するのは早いぞ?」
一緒に住む、という言葉に遥は顔を赤らめながら返事をした。
遥「は、はい」
俊斗の大豪邸を前に2度目の驚きを受ける遥。
そうして家の敷地に足を踏み入れる2人。
俊斗と遥の身長の差は大きくある。
夕日に照らされながら庭を歩いた。
遥は、図書委員の女の子に頼まれ放課後の5時まで図書室に残っていた。
女の子『今日彼氏とデートする予定あるから委員長の遥ちゃんに、当番変わって欲しいんだけど……ダメかな?』
遥『別に予定無いしいいよ……っ』
女の子『遥ちゃんありがと〜!じゃあお願いねっ』
ニコッと笑って去っていった女の子の背中を見つめた後、当番の仕事を終わらせた。
まだ夏が遠いから、暗くなるのが早い。
夕日の光が図書室の窓から入ってきている。
そんな様子をボーッと眺めていた遥は、図書室に入ってきた1人の男子生徒……、王子様みたいと騒がれている有名な先輩に呼び出された。
その先輩は青柳翔アオヤギカケルという名前で、男子とあまり仲良くしていない遥でも、名前を知っていた……。
そうして今に至る。
翔「いきなり呼び出してごめんね。1つ聞きたかったんだけど、一之瀬と付き合ってるって本当?」
不安そうに聞いてきた翔に、遥は焦り気味で答える。
遥「い、いいえ!付き合っていません!私なんかじゃ釣り合いません……っ」
なんでこんなことを聞いているのか分からず、とりあえず付き合っていることだけ否定した。
ぶわっと強い風が吹いた時、翔は一言小さく呟いた。
翔「じゃあ俺にもチャンスあるよね?」
遥「えっ……?」
遥(風の音でよく聞こえなかった……)
翔「そうなんだ……。俺、雪乃さんのこと気になってるんだ。だから、これからは意識して欲しいんだ」
翔の顔が赤くなっていき、翔は思わず顔を背けた。
遥は言っている事が理解出来ずに、困惑していた。
遥(気になっているってどういうこと……!?私この人の事名前しか知らないし、意識するって……?)
なにか返事をしないと、とそんな焦りが出てきた遥は返事をすることにした。
遥「意識する……ってどういう事ですか?私、青柳先輩のことよく知らないですし……」
翔「雪乃さんは鈍感だね。雪乃さんの事が好きだから、俺と話す時は意識してってことだよ」
優しく微笑みながらそう言った翔に、遥の胸はドキッとした。
遥(あんなに真っ直ぐ告白されるなんて……っ!しかもあの微笑みは反則すぎて無理だよ……)
さっきまで翔が赤かったのに、次は遥が赤くなる番だった。
かぁっと赤くなっていく顔をみて、翔は笑った。
翔「雪乃さん顔赤すぎ。可愛いね」
翔の手が遥の顔に近づいていく。
そうして頬に手を優しく添えられて、右手で髪を1束すくった。
遥(いきなり……何?早く離して……)
遥「は、離してくださいっ……」
遥の声を聞かずに、翔は独り言を呟いていた。
翔「雪乃さんが……俺のものだったらいいのにな。ずっと一緒に居たい、閉じ込めたいくらいに可愛いな……」
意味深に呟いたその言葉を聞いて、遥はゾクッとした。
遥(何、怖い……っ!誰か助けて……)
そう思った時、後ろから叫び声が聞こえた。
俊斗「遥っ!」
それは、私の大好きな人の声。
叫び声が聞こえたと同時に、手が離された。
そのまま一之瀬さんの所へ走って駆け寄った。
一之瀬さんは私を背中の後ろに隠して、こう言った。
俊斗「遥に何した?答えろよ翔」
サラリと名前呼びした俊斗に驚く遥。
俊斗の後ろに立っているので、表情が分からない。
でも、いつも遥の前では甘い雰囲気をしている俊斗の威圧的な雰囲気は異常で、怒っていることが分かった。
遥(名前呼び……?友達なのかな?しかまいつもよりオーラが……)
遥は恐怖でどうにかなりそうだった為、思わず俊斗の服を摘んだ。
目にうっすらと涙が浮かんでいる遥を、俊斗はちらりとみて、頭をぽんぽんと撫でた。
俊斗「大丈夫だから、遥は俺が守る。だから安心して守られてろ」
そんな甘い言葉を並べる俊斗に、遥の心臓は限界を迎えそうになっていた。
俊斗の背中の後ろで、両手で顔を抑える遥。
遥(好きな人にこんなこと言われたら、耐えれないよ……っ!明日から同居なのにどうしよう)
ずっとドキドキと高鳴る胸。
翔「ははっ……俊斗が一人の女に懐くなんてな」
俊斗「るせぇよ……遥に何しようとしてたんだ?」
翔「何って……キスだけど?幼稚園の時はお前より俺の方がモテてたよな」
俊斗「関係ねぇだろ。遥に何キスしようとしてんだよ!汚れるだろうが」
翔「俺を汚いものとして扱うのは辞めてもらえる?一応俺は先輩なんだけど」
二人の会話を聞いているうちに、二人が幼馴染であることがわかった。
遥(先輩なのにタメ口だし、親友みたいに言い争ってるからよほど仲がいいんだろう)
もし同じ学校に結衣ちゃんが居たら……私も2人みたいに言い争ったり、沢山遊べるのかなとか、結衣ちゃんに会いたいなとか幼い頃を思い出している遥。
遥の幼い頃の回想シーン。
遥4歳、結衣7歳だと言うことを表す絵。
二人の喧嘩。
結衣「やだやだ!私がこっちのネックレス付けるの!」
遥「私もピンクのネックレスがいい……!」
2人でピンクのネックレスを取り合っている時、結衣の弟が話に入ってきた。
その時、5歳だった弟は大人びていた。
弟「結衣姉さんうるさいよ。はるが困ってんじゃん」
結衣の弟は、結衣よりもよほど大人びた表情。
2人でじっと結衣の弟の言葉を聞いた。
その後「ごめんね」と言い合って終わったこの喧嘩。
これは全部……あの時のしーくんのお陰。
しーくんは結衣ちゃんの弟のあだ名。
しーくんと結衣ちゃんと私は、よく公園で遊んでいた。
しーくんはいつも公園のブランコに座って本を読んでいたけれど。
そんなしーくんと遊べた時間は短かった。
ある時、結衣ちゃん達が引越しをすることを聞いた。
引越しする前に結衣ちゃんと会いたかったのに、親に言っても会わせて貰えなかった。
遥「ねぇお母さん……っ!結衣ちゃんに会わせて!」
母「ダメよ。結衣ちゃんは忙しいんだから会っちゃダメ!」
泣きながらどれだけお願いしても、結局会わせて貰えなかった。
それから一切会うことなく、今に至る。
現代。
遥(結衣ちゃん元気にしてるかな?彼氏さんとか出来たのかな……?結衣ちゃんは今、19歳くらいだから大人っぽいんだろうな)
結衣ちゃんの事で頭が埋め尽くされていた時、俊斗は振り返った。
遥「え?」
俊斗「遥、帰るか」
帰るってもう話し終わったのかな、そう不思議そうな顔で俊斗を見つめる。
俊斗「話終わったから帰ろう。家まで送る」
サラリと家まで送ると言われドキッと胸が鳴る遥。
遥「は、はい……!」
歩いていく俊斗の背中を小走りで追いかけて、隣に並ぶ。
身長差は結構あって、俊斗からみたら遥は必然的に上目遣いになってしまう。
いきなり顔が赤くなった俊斗を見て、遥は熱でもあるのかなと思った。
遥「熱でもあるんですか?」
心底心配しているような瞳と顔。
顔を赤らめながら返答する俊斗。
俊斗「いや、熱は無い。ただ遥が可愛かっただけだ」
遥「え?私は可愛くないですよ」
遥(世間一般的に見ても私は絶対に可愛いとは言えない。クラスのみんなの方が絶対に可愛いはずなのに……)
すぐに可愛い、可愛いと言う俊斗にもう冗談だろうと呆れ気味になってきた遥。
冗談だと分かっていてもドキドキとなり続ける胸。
胸を抑えながらカバンを取りに教室へ歩く。
並んで歩いていると、色んな人からの視線を感じる。
チラチラと見て、ひそひそとした声。
女の子だけではなく、男の子のすごい視線。
そんな時、俊斗は遥の方を向きこう言った。
俊斗「女なんか気にすんなよ」
遥「はい……っ」
遥は自分のことを気にしてくれた俊斗にドキッとした。
門まで行って俊斗の車に乗った。
遥「お邪魔します」
遥(やっぱり居心地が悪い……。高級車に乗れるなんて贅沢すぎる)
自分には勿体ないと思ってしまって、遥はギュッと目を瞑った。
そんな遥を見て、心配そうな顔をした俊斗は遥の頭に手を乗せた。
俊斗「これから一緒に住むんだし、車で緊張するのは早いぞ?」
一緒に住む、という言葉に遥は顔を赤らめながら返事をした。
遥「は、はい」
俊斗の大豪邸を前に2度目の驚きを受ける遥。
そうして家の敷地に足を踏み入れる2人。
俊斗と遥の身長の差は大きくある。
夕日に照らされながら庭を歩いた。