○春

婚約した2人。

沢山の人に祝福され結婚式が終わった。

そして少し経った時、2人は一軒家に引越しをすることになった。

遥「一之瀬さんっ!荷造り終わりました」

俊斗にニコリと微笑んでそう言った。

その笑顔を見て俊斗は軽く顔を赤くした。

俊斗「俺も終わった」

そうして引越し業者が来て、ついに新しい家に。

他の家よりも大きくて庭もあるような、そんな家。

車で移動している時に俊斗は言った。

俊斗「これから俺の事は俊斗って呼んで」

遥「へ?」

まぬけな声を出した遥は俊斗の方を見て、みるみると顔を真っ赤に染めた。

遥「い、いやっ、無理です」

俊斗「なんで」

遥「恥ずかしいので……」

遥(一之瀬さんっていう呼び方で慣れちゃってるのに、今から変えることなんてできない)

困り果てた顔をする遥を見て、俊斗は意地悪に笑う。

俊斗「じゃあもう婚約は無しだよ?」

遥「それは絶対に嫌ですっ!!」

いきなり大声をあげた遥に俊斗は驚いていた。

俊斗「じゃあ俺のこと、名前で呼んで」

遥「う……」

言葉に詰まる遥は、意を決した顔で言った。

遥「し、俊斗……っ!」

でもいい終わった遥は、みるみるうちに真っ赤になっていった。

そして顔を逸らし、手で顔を仰ぐ。

俊斗「……」

俊斗からの返事は無い。

チラッと遥は横目で俊斗を見た。

遥「……!」

目を見開いて遥は驚いていた。

遥(一之瀬さん、いや俊斗……顔真っ赤。珍しい)

少し可愛いかも、と思いふふっと微笑む。

俊斗「何笑ってるんだ」

まだ顔が赤い俊斗が、ムスッとした顔で言った。

遥「ふふっ、いえ何もありません」

俊斗「遥の呼び捨ては破壊力がやばいから少しずつでお願い」

遥「俊……斗」

俊斗「やめてくれ」

もう耐えきれないとでも言わんばかりに赤くなった俊斗を見て、遥はニヤニヤが止まらなかった。

○新居、夜

遥「一之瀬さん!ご飯出来ました!」

ニコニコと笑顔で俊斗に声をかける。

俊斗「メニューは?」

遥「今日はエビフライとサラダとポテトです!」

俊斗「美味そう」

顔が明るくなってニコと笑った俊斗に、遥は言った。

遥「じゃあもう食べちゃいましょう!」

俊斗「ああ」

そして2人で手を合わせる。

同時に口を開いて。

遥・俊斗「「いただきます」」

そう言って俊斗がパクリと口にエビフライを入れた。

パッと顔が明るくなって美味しそうに笑顔で食べている。

俊斗「美味い……」

遥「ふふっ、それは良かったです!おかわりもありますよ!」

俊斗「おかわりする」

遥「はーい!」

卒業する前のように楽しく会話をしながら食べていく。

遥・俊斗「ご馳走様でした」

遥「お粗末さまでした」

手を合わせてまた挨拶。

お皿を運んで水につける。

そしてお風呂に入り、2人でお喋りをしてまったりとした時間を過ごした。

そしていつの間にか夜11時になっていた。

俊斗「そろそろ寝た方がいいよな」

遥「そうですね……っ!」

ベッドは2個あるから別で寝れるけど、今日だけでも一緒に寝ることにした。

2人で寝転んで、またお喋り。

俊斗「遥」

遥「はい?」

俊斗「今日だけ、抱きしめて寝てもいいか?抱き枕代わりで」

俊斗の甘えるような声に、遥はドキドキしていた。

遥「そんなの……もちろんいいですよ!」

俊斗「あと、名前……」

寝る前になると甘えモードに入るのかな、と思って遥は口元が緩む。

遥「俊斗。だいすきです」

俊斗「俺も。あとタメ口にしよ」

遥「……っ!俊、斗……だいすきだよっ」

タメ口に変わった遥の声を聞いて、俊斗は絶句。

遥「どうしたの?」

俊斗「遥が可愛すぎて寝られない」

遥「じゃあ私だけ先に寝るよ」

そして遥は目を瞑った。

遥(本当はもう少しだけお喋りしたいけど、明日沢山お喋りしたらいいよね……っ!)

そう思った時、俊斗は遥を引き寄せてギュッと抱きしめた。

遥はビクッと体を強ばらせたけど、そのまま眠る。

遥「俊斗……だいすきだよ。ずっとずっと、大好き!」

そう言って遥は寝転びながら微笑む。

これからもずっと幸せが続いたらいいな。

こうやって2人でお喋りして、名前で呼んで友達のように話して。

ずっとこの幸せが続きますように!

※遥の笑顔で物語が終わる。