御曹司の金持くんはマイペースな幼馴染にめっぽう弱い

「私も金持くんのこと好きだよ。旅行楽しみ」

 ぐりぐりと顔を押し付けながら想いを伝えれば、宙に浮いたままだった金持くんの両手が勢いよく私の背中を抱き寄せる。
 あの雨の日よりも、もっと強く。

「めっちゃくちゃ嬉しいな……しばらくこのままでいて良い? 全く実感が湧かない」
「ふふ、いいよ。新多くん」
「あ……らたくん? 新多くんって言ったか?」
「かねもちくんって言った」
「言ってないだろ! ちょ、待ってごめんもう一回呼んで」
「えー。じゃあ私のことも苗字じゃなくて名前で呼んで?」
「澪、お願い」

 可愛い。
 ぎゅうぎゅうに抱き締められたままお願いされてしまった私は、耳を赤くした彼を見上げて、にへらと笑った。

「大好き、新多くん」