御曹司の金持くんはマイペースな幼馴染にめっぽう弱い

「……直田が思ってる通りだよ」

 金持くんがおもむろに手を下ろして、私の指先を遠慮がちに掬う。

「俺、ずっと前から直田が好きだった」

 ぎゅ、と手が強く握られて、私の心臓も同じように絞られた。

「今も。会うたびにどんどん好きになる。直田は昔から、金持家じゃなくて俺のことを見てくれるから──いや、何だろうな。それすらも建前みたいに感じるけど」
「……というと?」
「一緒にいないと駄目になりそう」
「私が?」
「いや俺が。直田と再会するまで、よく大学と会社経営の勉強ちゃんとやってこれたなって感じ」

 苦笑まじりに語る金持くんを見上げ、私は繋がれた手を控えめに握り返す。

「私も金持くんと一緒だったらなって思うこと、いっぱいあったよ。中学の時は、みんなに囲まれてる金持くんが何だか遠くて、避けちゃったけど……余計なこと考えずに話しかけたら良かったって。そしたら──」
「──今も隣にいれたかもしれない?」

 引き継ぐように紡がれた言葉に、驚いた私は金持くんと目を合わせて、小さく笑ってしまった。

「おんなじこと思ってたんだ、私たち。変なの」
「だな。……あー、いやほんとに、すごい遠回りした気がする」
「ねえ金持くん」
「ん? ──ん⁉」

 繋いだ手を一旦離して、ぎゅうと金持くんを抱きしめる。体格的に私がしがみつくことになったけど、まぁ良いかと温かい胸元に顔を埋めた。