御曹司の金持くんはマイペースな幼馴染にめっぽう弱い

「あ、その、ええと、うん、旅行……行きたい、です。私も」
「マジ？　無理してない？」
「し、してないけど、一個聞いていい？」
「なに？」
「最近たくさん遊んでるけど、あの、あれは、デートという解釈でいいですか？」

　金持くんは目を見開くと、パンッといきなり両手で自分の頬を叩いた。
　唐突な行動にびっくりしていると、金持くんが心底参ったような顔で言う。

「……や、そう、そのつもりでしかなかったけど、ストレートに聞いてくるのか……」
「ごめん、私その、男の人と付き合ったことないから、あんまり文脈とか空気みたいなの読めなくて」

　金持くんがとんでもなく大きな深呼吸をして、「文脈」と反芻した。私も文脈は何か違う気がしてたから、しみじみと繰り返されると恥ずかしい。