御曹司の金持くんはマイペースな幼馴染にめっぽう弱い

「ライブ……チケット……!」

 何度応募しても落選ばかりだったアイドルグループのライブチケットを前に、私は思わず小さく飛び跳ねてしまった。

「も、貰っていいのっ?」
「うん。前の撮影のときに俺の……友達が、みーこさんの大ファンって話をしたら、事務所から郵送されてきたから」
「ええ……⁉ じゃあこれ、関係者席っていうやつ……?」
「招待だからそうなるな」

 そういえばみーちゃんの所属事務所には、金持グループの企業がスポンサーについてた気がする。何て世界にいるんだ金持くんは。

「わぁ……ありがとう! でもいいのかな、私は金持グループと何も関係ないのに」
「俺と関係あるだろ」
「そうだった金持くんが金持くんだった」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……」

 突然のサプライズで言葉が危うくなってきた私に、金持くんがおかしそうに笑う。

「そういうわけだから予定空けといて」
「あっ、金持くんも来てくれるんだよねっ? 私やだよ一人で関係者席とか」
「行くよ。その……直田と旅行、してみたかったし」

 旅行。一瞬だけ思考が停止して、慌ててライブの開催地を確認する。確かに日帰りで行ける距離ではなかった。
 再び顔を上げてみれば、金持くんは様子を窺うように私を見ていた。ちょっとだけ耳を赤くして。

 ──それデートって言うんだよ、澪ちゃん。

 奈子ちゃんの声が頭の中で高速でリフレインして、私は顔を真っ赤にしてしまった。