御曹司の金持くんはマイペースな幼馴染にめっぽう弱い

 ◇


 カーテンの隙間から射し込む朝日。
 爽やかな淡い空。
 寝返りを打った先には金持くん。

「かなじくん?」

 ぱちぱちと目を瞬かせていたら、ベッドに頬杖をついた金持くんが緩やかに笑った。

「おはよ」
「おはよう……」
「爆睡してたな」
「え? あ、金持くん、眠れなかった……?」
「トータルで二時間は寝たと思う」
「それ寝てないよ」
「誰のせいだと思ってんだろうな」

 最後はぼやくように言いつつ、金持くんの長い指が私のおでこに触れた。ぼさぼさの髪を優しく退けられて、視界がクリアになる。

「今日、土曜だけど講義あんの?」
「ないよ」
「ならもう少しいても良い?」

 思わぬ申し出に固まってから、私は小刻みに頷く。

「うん。じゃあ、朝ごはんと、おやつ買いに行こ。金持くん」

 小学校の頃もこんなこと言った気がするなと思ってたら、金持くんも覚えてたみたいで、嬉しそうに笑ってくれた。