「ゴホン、すみません。あおいさんの反応が面白くて…つい…」
「いえ!……」
二人同時に離れると、急によそよそしくなってしまった。
和真はぬるくなったココアを一気に飲み干すと、立ち上がってあおいの頭を撫でる。
「学園生活が楽しそうで良かったです。ココア、ごちそうさまでした。おやすみなさい」
「は、はい…おやすみ、なさい…」
撫でられた後、顔を上げれば柔らかな表情をする和真が見ていた。
少しの笑みを見せると、キッチンの流しにカップを置いて、自室へ行ってしまった。
あおいはしばらく、一人顔を赤らめていた。
ドキドキする鼓動の理由もわからず、ただ和真の表情や笑みが優しさを帯びているのを忘れられないでいる。
しかし、帰り際の涼介に紹介された際に、‟義妹である”という言葉をふいに思い出した。
『義妹なんですから』
ズキン
先ほどまでドキドキしていた胸の高鳴りは、和真から発せられた言葉に痛みを感じ始めた。
まだカップに残るココアを見つめるあおい。
(…和真さんは本当のことを言っただけなのに…)
感じる胸の痛みの理由を探すものの、答えが見つからない。
痛みと一緒にココアを一口流し込んだ。
(水族館だって私を気遣って連れて行ってくれて…さっきのだって、和真さんなりの妹としての接し方だろうし…本当だったら、お姉ちゃんが似合ってる…)
和真との生活や水族館での出来事を姉のすみれに置き換えてみる。
「……私は妹だもん…」
ぽつりと呟いたあと、グイッとココアを飲み干した。
そして、キッチンへ行って、和真と自分の分のカップを洗い終えると、自室へ行って明日の用意をし始めた。
モヤモヤ…
各科目で出された課題に取り組み始めると、教科書を出して眺めてしまう。
内容が頭に入ってこない。
(本当だったら…全部お姉ちゃんがされることで…和真さんはずっと妹として接してくれてる…)
とうとう、ペンを持つ手がまったく動かず、ただ机に向かって座っているだけになった。
しばらくして、ハッと我に返るあおいは、ブンブンと顔を左右に振る。
「そもそも、どちらにしろ私はどっちの妹だし!和真さんが優しいことはわかってる…し…」
自分を納得させるための言葉を発したつもりが、最初に会ったときの和真のことを思い返した。
出会った頃と比べても、和真のある一つのことがあおいの中に大きく残っていることに気づく。
ぼんやりと考えてしまっていると、夜更けに近い時間に気づき、慌てて今度こそ課題に集中した。
