義兄と結婚生活を始めます


ワクワクよりも不安な気持ちの方が大きいあおいだったが、ポケットが震えていることに気づいた。
取り出すと、画面には千尋からの着信が数件、MINEが何通か入っている。


「ちーちゃん…」

「なぁに?千尋ちゃん?」

「うん。たぶん、心配して連絡してくれてるんだと思う。帰ってから返す」


ニコッと笑うと、先に最寄りの駅で両親が降りた。
車に残ったあおいは、中から別れの挨拶をする。


「今日はありがとう。お父さんとお母さんに会えて嬉しかった!」

「もうこの子ったら…いつでも連絡ちょうだいね」

「学園生活、無理はしないようにな。何かあったらすぐに言うんだぞ」


両親からあたたかい言葉をもらうと、車の窓を閉めて発車する。
二人の姿が見えなくなるまで、あおいは後ろの窓をずっと見つめ続けていた。


ようやく前を向くと、スマホを取り出して千尋へ返信をしようとした。


「あおい様、ちょうど和真様が退勤なさったようで、このままお迎えに行っても構いませんか?それとも先に」

「あ、い、行ってください!…お願いします」

「ありがとうございます」


食い気味にお願いをしてしまった自分が恥ずかしくなり、落ち着かせるために胸に手を当てる。


(あ…仕事終わりの和真さんに会うのは初めてだ…)


そのことに気づくと、何やらソワソワするような、不思議な気持ちになった。
走っていた車は、しばらくすると、大きなビル前のロータリーに停まる。


運転席から降りた三森は、すぐに後部座席に回り、ドアを開けた。


「失礼します」

「は、はい…!」


乗り込んできた和真とは、数時間前まで一緒にいたはずなのに、違う雰囲気に感じた。
あおいが何か話そうか考えている前に、和真は鞄からタブレット端末を取り出し操作を始める。

まるで話しかけるなという意思表示に感じたあおいは、少し残念な気持ちになって俯いた。


(………って、なんでこんなこと…帰ってからでも話はできるし…今じゃなくてもいいんだから…)


車が発車すると同時に、悶々としてしまう自分の感情に振り回されるのを落ち着ける。
膝に置いた手に力が入りつつも、窓から見える街灯を眺めた。


「荷物が届いているそうです」

「え?」

「三森さん、着いたらあおいさんの部屋まで運んでください」

「はい、かしこまりました」


和真の言葉で思い出して、あおいも鞄の中をゴソゴソと探すと、学園から渡されたリスト表を見た。
薄暗い中でも多数あることがうかがえるほど、一枚にびっしりとプリントされている。


「ほとんどが大学でも使える教科書と資料集なので、冊数はありますが、役立ちますよ」

「大学…はい…」