義兄と結婚生活を始めます

「ではあおいさん、我が明望学園への入学おめでとう」

「…おめでとうございます」

「あ、ありがとうございます…」


和真以外からの祝いの言葉はなく音頭は終わった。
すぐに各々の席の前に料理が運ばれてくる。

しかし、箸をとって食べ始めるものの緊張と居心地の悪さから、美味しいはずの料理の味がしない…。


(こんな殺伐とした空気…お金持ちって怖い…)


心の中で涙を流すようにあおいは苦い気持ちのまま、口をもぐもぐと動かした。


「ところで、顔合わせというけれど兄さん、肝心の小鳥遊の新妻が来ていないじゃない」

「…誰も、嫁いできた者の顔合わせとは言っておらん。両家の顔合わせみたいなものだ」

「出たわね。肝心なことはすぐに濁す…式で見たわよ。そこの子でしょ?背格好もそっくりだったわ」


あおいを指さすと、向かいの席の全員の視線が突き刺さってきた。
ビクリと小さく肩を震わせるあおい。


「はぁ~…学生…しかも未成年なんて正気じゃないわ兄さん」

「お前の見間違いだ。あおいさんは和真の妻の妹さんだ」

「うそ!こんなことが世間に知られたら…兄さんの方が小鳥遊家を脅かすつもり!?一大スクープとして小鳥遊家は終わりよ!!それなら」

「お前の娘の由梨子を和真の嫁に?はっ、それこそ小鳥遊家が終わる。あれは後継者である和真の妻にはできん」

「な…!!」


顔を真っ赤にさせて激怒する女性は、どうやら社長の妹のようだった。
さらに、あおいが驚いたのは、由梨子の母親だということ。

そして、吊り上がった目であおいを見ると、わなわなと肩を震わせる。


「あなたがた親も子も、揃って恥というものはないのかしら!?どうして和真さんの妻である者がいないの!?説明なさい!!」

「僕の妻は事情があって、本日はこちらに顔を出せないんです。両家の顔合わせですよ?大声を出して、どちらが恥知らずかわかりませんか?」


静かに反論する和真に、女性はグッと黙り込んだ。
これを読んでいたのか、小鳥遊社長は笑みを見せている。


「叔父さん、業績の件ですが、取引内容の打ち切りが多い原因は何にあるか、おおよその見当がついているので、そこを改善してください。それから、経費の内容がややおかしい部分も見受けられます。これはそっこく修正し納めてください」

「……わ、わかった…」

「和真にはまだ他の経営部分の見直しもさせているからな。今日のことも含め、下手な動きはせんように」


和真は再び食事を始め、社長の方は頬杖をついて、したたかに笑った。
暗に、すみれやあおいの件に口を挟むなということだろう。

すると、あおいの父親が立ち上がった。