「あおいさんの入学祝を兼ねて、一部の親族で食事会を設けてある」
「そっ、そうでしたか…!えっと、では…」
驚く父親は、自分の妻とあおいにチラリと視線を送る。
「あぁ、天崎くんは私と一緒に。話もあるしな。和馬、お前はあおいさんたちと来なさい」
「承知しました」
和馬は社長へペコリと頭を下げると、あおいと母親を2台目の車は案内し、後部座席のドアを開けた。
「まぁ、すみません」
「あ、ありがとうございます…」
「あら!あおいさん!また明日ね、ご機嫌よう」
車に乗りかけたあおいの後ろで未来と咲がいた。
未来は笑顔で手を振り、先はじっと見ているだけだった。
「うん!また明日!」
同じように笑みを返して手を振ると、車に乗り込んだ。
和馬も未来と咲に会釈すると、自分も助手席へ乗り、車が発車する。
「はぁっ、はぁっ!待っ…!!」
校舎内から走ってきた一人の男子生徒が、あおいたちが乗った車に手を伸ばすものの、すでに校門から出て行った後だった。
よほど急いでいたのか、流れる汗を袖で拭うと、悔しそうな顔をしたまま肩で息をする。
「…あおい…だよな……」
小さくつぶやく声は、どこか確信した一言を発したのだった。
車内では、新しい顔ぶれに声をかけられたあおいに対して、母親が嬉しそうに聞き出す。
「もうお友達ができたの?」
「うん。未来ちゃんと咲ちゃんっていって、優しい子たち…だと思う」
「そう…初日でドキドキしたけど、あおいにお友達がてきて嬉しいわ」
ホッと胸を撫で下ろす母親。
心労の絶えないだろう両親に、申し訳なさを感じてしまうあおいは、母親の手を握った。
「ちょっと緊張はするけど、学園生活が楽しみになってるよ、私」
「そう…よかった…。あおいったら内気だから…頑張ってるのね」
「そりゃまぁ…頑張らないとでしょ…」
2人で笑い合っているところで、ふと母親が和真に問いかける。
「小鳥遊さん、あの会食ですけれど、ご親族はどなたがこられるのですか?」
「ごく一部です。海崎さん方は話を合わせるだけで結構ですよ」
「あ、えっと、話を合わせてバレないようにってことですよね!?」
答えになっていないような返答をしながら、タブレット端末を扱う和真の言葉に対して、あおいがすかさずフォローを入れた。
少しばかり不安になる母親は、さらに質問を続けた。
「あの…小鳥遊さん…あおいは…うちの娘はきちんとやれていますでしょうか?何かしら失礼なことは…」
「…今のところはありません。今からの食事会は、建前上あおいさんの入学祝ですが、近しい親族との顔合わせも兼ねていますので、気を張っていただければと思います」
唐突な建前と本音を聞いてしまったあおいと母親は、一気に緊張感が出てきてしまった。
(そういうのって…今言わなくてもいいよね…!?)
