義兄と結婚生活を始めます

司会者が持っていこうとしていたマイクをとり、詫びを入れる。


「失礼、まだ言っていないことがありました」

「小鳥遊様!?」

「小鳥遊あおいさん、本日のご入学おめでとうございます。今朝言えなかったのを思い出しまして…制服、似合っていますよ」


今までシンとしていた講堂内が大きくざわついた。
あおいは自分の名前を呼ばれたことに驚きと戸惑いで、顔を下に向けたままだった。


「あおいさん?聞こえませんでしたか?制服、似合っていますよ。あおいさん?」

「あ、ありっ、ありがとうございます!!」


ガタっと立ち上がると、真っ赤な顔で和真を見る。
目が合ったと感じた瞬間、和真はフッとほほ笑んだ。

柔らかな表情は、水族館や家で見るときと一緒だった。

あおいはすぐに座るものの、一気に注目の的となる。
大勢の視線を感じるあおいは、縮こまるとギュウッと目を閉じ続けた。

ザワつきはおさまらないまま、新入生は各クラスへと案内された。


一連の流れと和真の表情が忘れられないあおいは、流れるまま新しく迎える学園生活のクラスへ入っていったのだ。







「…し…ん、た…しさん、小鳥遊さん!」

「へぁ!?は、はい!」


ようやっと我に返ると、数人の女子生徒に机を囲まれていた。
途端に、矢継ぎ早に質問が飛び交う。


「小鳥遊さんは午後は空いているかしら?」

「良かったら私たちとお茶しません?良い茶葉があるんですよ」

「先日、父が結婚式に出席したのですけど、素敵な式だったようで…あんなに格好いい方とご結婚されて羨ましいですわ」

「あの今朝っていうのはもうご一緒に住まわれてるんですの?」

「そういえば、小鳥遊さんが経営なさっている企業のお話を…ー」


さまざまな質問内容の中に、結婚式の話が出てきたのには、あおいも冷や汗をかいた。
誰のどの質問に答えたらいいのかわからず、口をパクパクさせてしまう。
すると、鋭い声と言葉で質問が止まった。


「貴方たち、もうすぐ担任の先生が来るわよ。くだらない質問してないで、早く席に着きなさい」


ハッと気づけば、式で右隣に座っていた栗毛色の女子生徒が腕組みをしてキッと睨んでいる。
あおいを囲んでいた生徒たちはたじろぎ、反論しようとした。


「いい加減うるさいわ。白木さんの言うように、大人しく座ってたら?」


今度は左隣から黒髪の女性生徒が追撃してきたおかげで、群れていた群衆は散っていった。
同時に、教室のドアが開き、担任が入って挨拶を始める。


「えー、改めましてようこそ明望学園へ。入学おめでとう。このクラスを担当する金代です。よろしくお願いいたします。さっそくですが、配布物と持ち帰りリストを回していってください」


30代前半の男の担任だ。
穏やかそうな見た目とハキハキとした明るい物言いに、あおいは好印象を受ける。