思ってもいない言葉に、あおいはたじろいだ。
「な、え?私…!?」
「あ、あおいはまだ15歳です!流石に法律でも結婚なんて…!!」
「落ち着いてくれ、一日だけ花嫁の代役だよ」
ニコニコと笑顔を見せ続ける社長。
その隣にいる和真は、反論もなく静観していた。
社長は言葉を続ける。
「海崎くん」
「…っ!……あおい…、すぐに準備に入りなさい」
「…はい…」
口を開きかけるあおいだが、責任感の強い父親であることを知っている。
それに、姉の失踪は海崎家の問題・責任であることに変わりない、と悟った。
しかし、あおいは和真をじっと見て問いかける。
「お、お義兄さん…は、いいんですか?」
「はい、問題ありません」
即答と言えるほど、あっさりとした返事に、あおいは何も言えなくなった。
それから、社長・和真・父親が出ていくと、入れ替わるようにバタバタとスタッフが準備をしに入ってくる。
半ば放心状態になるあおい。
化粧や髪型の変更をした後、本来であれば姉が着るはずだったウェディングドレスを身につけていく。
すみれの身長に合っていたドレスは、あおいが着ると大きい…。
スタッフたちがすぐに対処をしてくれる。
裾を上げて引き締めたり、結び目を作ってみたりして、なんとかあおいの体型に合うよう変わっていく。
ぼんやりと見ていたあおいは、目を閉じると前日までのすみれとの会話を思い出していた。
ー…
それは、前日の夜、すみれの部屋に訪れたときだ。
『お姉ちゃん、大丈夫?』
『…ん!?何が!?』
『夕飯も食べてなかったし、なんとなく…元気ないから…』
ベッドに並んで座るあおいは、もじもじと手を動かして、チラリとすみれを見た。
ニコッと笑うすみれは、あおいの頭を撫でる。
『だぁいじょうぶ!明日のことで、緊張してるだけだよ〜』
『お、お姉ちゃんでも、緊張するんだね…』
『するする!…でも、ありがとう、あおい……あ〜!こんな可愛い妹と離れるのはさーみーしーいー!!』
撫でていたすみれの手は、あおいをぎゅっと抱きしめた。
すみれの腕の中で、少しだけ涙を浮かべていたあおいは、気づかれないうちにそっと目を閉じる。
寂しさを持っていたのは、自分だけではなかった…そんな小さな気持ちをすみれと共有していたこと。
新たな人生を歩む姉が心配しないよう…
きちんと見送る決意を固めた。
ー…
そして、思い出から目を開けたあおいは、仕上がった自分を鏡で見る。
気づけば本当に、花嫁としての姿になっていた。
「…こんなの、すぐにバレちゃうよ…」
幼さがある顔に化粧を施していても、子どもであるということは見てわかる。
そっと鏡に手を添えたあおい。
父親と社長のやり取りを思い返すと、賠償金だけでは済まないことを悟っていた。
仕事を失うだけではなく、自分たち家族もバラバラになってしまうこと…。
自分が代役を務め上げれば、まだ希望があること。
俯くあおいは自分に言い聞かせた。
(…大丈夫…今日だけ…今だけお姉ちゃんの代わりになるだけ…完璧に…)
キュッと口を結ぶと、顔を上げる。
すると、控室に入ってきた両親が声をかけてきた。
