「起きましたか?」
「……え!?あ…!」
「荷物が落ちるので、そのままでいてください」
両手に荷物を下げて、あおいを横抱きにしている和真が、エレベーターに向かって歩いていた。
その言葉どおり、じっとするあおいだが、ゆっくり手を伸ばすと、和真の首に腕を回す。
「……バランスが取りやすくなりました」
「は、はい…」
真っ赤になるあおいは、恥ずかしさからギュッと目を閉じた。
エレベーターを待つ時間、乗っている間の時間すら長く感じてしまうほどだった。
家の前に着くと、ようやく降ろされる。
「あぁあ、ありっ、ありがとうございました…!」
「僕も寝てしまっていたようで…重かったでしょう」
「いえ!…その、嬉しかったです…今日…」
ドアを解錠すると、先にあおいを中へと促した。
和真も家に入り、玄関に荷物を置くと、先に上がったあおいが振り返る。
「わ、私もっ、和真さんを幸せにします!…えっと、いっぱい頑張ります…」
「一緒にいられるだけで幸せです」
段差のおかげもあり、同じ目線に近づいていたが、少し屈んだ和真が微笑んで答えてくれた。
あおいはバッと両手を開くと、靴を脱ごうとしていた和真を抱きしめる。
「……」
「……えっと…この後…ど、どうしたらいいんでしょうか…」
自分から行動したのはいいものの、抱きしめたまま固まるあおい。
そのまま靴を脱いだ和真は、あおいを抱き上げた。
「きゃ…っ」
「僕ならこうします」
「え、えぇ〜…!?これ…私、できません!」
「はい。僕だけができることです」
「……ず、ずるい…」
顔を赤くするあおいを、そのまま自分の膝に乗せて、一緒に座る和真。
「少しゆっくりしましょうか」
「できません…!!」
「…降りてもいいですよ?」
あおいの反応に機嫌を良くしたのか、クスッと笑って顔を覗き込んだ。
一生懸命に両手で顔を覆い隠すが、赤い耳ですぐにバレてしまう。
和真があおいの頭を胸元へ寄せると、小さな声が聞こえた。
「和真さんの意地悪…」
「………」
ようやく顔を見せたあおいは、悔しそうな困ったような、そんな表情で和真を見上げた。
降りる素振りや気配もないことを含め、和真の挙動は止まる。
「…?和真さん?」
「ずるいのと意地悪なのは、どっちなんでしょうか」
「え?え?」
反対の手で口元を隠すと、目を閉じて呟く和真。
その言葉の意味がわからないまま、あおいはそっと見上げた。
「あの、今日はありがとうございました…」
「僕の方こそ、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。あおいさん」
「…はい…はい!よろしくお願いします!」
笑顔で答え合う二人は、そのままゆっくりとした穏やかな時間を過ごした。



