「それから、妹…あおいを泣かせたら…マジで何するかわかりませんから」
「……はい…」
すみれの気迫に押されたのか、短い返事を聞き取ると、もう一度ニコッと笑った。
そこへ、あおいが荷物を持ってやって来た。
「和真さん!お待たせしました。お母さん、いっぱい持たせてくれて…お姉ちゃんのお菓子嬉しい」
「フランス本場の味を知れ〜」
「…出国はいつですか?」
あおいが持つ荷物を受け取りながら、聞いてみるが、少し考えるすみれ。
「んー。来週には…店長とかに辞表出してすぐこっちきたから…鬼電がすごいのよ」
「お姉ちゃん…それ、大丈夫なの…?」
「もちろん!頭下げて、また見習いから頑張らせてもらうつもり!」
心配するあおいの頭を撫でて笑っていると、両親が見送りにやってきた。
「夕食も食べて行けばいいのに…」
「和真くん、またゆっくり話そう!いい酒待ってるよ」
「まっ。お父さんってば!」
母とすみれからバシッと背中を叩かれる父は、小さな声で言い訳をしていた。
クスッと笑った和真は、ペコリと頭を下げる。
「社長のところから、良いボトルを持ってきましょう」
「それじゃあ、ありがとう!お父さん、お母さん、お姉ちゃん!」
「気をつけて帰ってね」
「お邪魔しました」
玄関のドアを開ければ、外で三森と車が待機していた。
後部座席のドアを開けられると、先にあおいが乗り込み、窓を開けて手を振る。
「お姉ちゃんも頑張ってね!」
「ありがと〜あおいも無理しちゃダメだよ!」
「出しますね」
三森の言葉に合わせて、車が発進した。
手を振っていたあおいは、窓を閉めながら顔だけ振り返って、見送る家族が見えなくなるまで見つめた。
「…なんだかあっという間でしたね〜…」
「あおいさんのご家族は、皆さんあたたかいですね」
「ありがとうございます!」
余韻に浸るように笑うあおいだったが、車が走る時間が長くなるほど、ウトウトし始める。
コテン、と自分の頭に寄りかかった和真に気づくと、眠気が吹き飛んだ。
「ほっほっ、これは珍しい」
「え……」
あおいに寄りかかった和真が寝入っている。
(…和真さん…緊張してるって言ってたもんなぁ…)
「ありがとうございます…」
すーっという小さく聞こえてくる寝息に、そっと囁くと自分のために動いてくれた和真に嬉しくなった。
満たされる感覚を覚えながら、あおいもゆっくり目を閉じた。
次に目を開けると、和真の顔が上にあった。
ぼーっと見上げていると、和真と目が合う。



