(どうしよう…何か、話題出さないと…)
黙々と食べ進める二人の空気に、いつも会話していたかどうかさえ、わからなくなった。
「久々ですね」
「え!?」
「こうして、あおいさんと一緒にご飯を食べるのが、です」
顔を上げると、柔らかな表情で自分を見てくる和真に、確かにと思う。
「そう…です、ね…」
「…あおいさんは平気そうだったみだいですが」
「そっ、そんなこと…!!…ないですよ…」
由梨子との事情があったことは言えないが、目の前で優しく微笑む和真を見て、小さく口ごもった。
「一緒に食べられるのが嬉しい」
和真の目がそう語っているように感じるあおいは、顔を赤くする。
「食後に、もう一度ココアをいただきたいです」
「はい…」
和真の要望を聞いたあおいは、食後に同じココアを作り、カップに注いだ。
カップの受け渡しで触れ合う手でさえ、今のあおいの心臓には悪い。
「ありがとうございます」
「いえっ。…あの、和真さん。甘いの苦手なのに、ココアは好きなんですか?」
「……そうみたいですね」
受け取ってすぐに飲み始める和真に、不思議そうに聞くと、クスっと笑われた。
そんなあおいに手を伸ばしたが、途中で止まる。
「…撫でてもいいですか?」
「は、はい…!」
改めて聞かれると思っていなかったあおいは、体を強張らせてギュッと目を閉じて待った。
あおいの様子を見て少し眺めると、耳元に顔を近づける和真。
「力、抜いて」
ハッと目を開けると、和真の手が頭を撫でてくれていた。
しばらくあおいの頭を撫でた和真は、ようやく手を離す。
「お風呂、先にいただきますね。おやすみなさい」
「…お、お、おやすみなさい…」
平常だったあおいの顔は、和真がいなくなったのを確認すると、真っ赤になる顔と囁かれた耳に手を添えた。
(なん…っ、なにっ…あれ…!)
脈打つ鼓動の速さや戸惑いがあったものの、耳に残された和真の声の方が大きく上回る。
あおいは響く鼓動に、明日以降の自分がどうなるのか、全く想像できなかった。



