「少し頼みたいことがあるのですが、いいですか?」
「はい!何でも言ってください!」
頼られていることが嬉しくて、和真の言葉を待った。
そんなあおいの気持ちに気付いているのかいないのか、和真は微笑むと頭を撫でる。
「着替えをしたいので、クローゼットから着替えをだしてくれますか?」
「はい!こっち側のひき出しですか?」
「はい。黒の方でお願いします」
上下の着替えを取り出して和真に渡すと、一旦部屋を出た。
キッチンへ向かうと卵粥を作り始めたあおい。
(笑ってくれた…)
作っている間、和真の笑みを思い返してはあおいも笑顔になる。
しばらくして出来上がると、冷たいタオルと一緒に和真の部屋へ持って行った。
「和真さん、入っても大丈夫ですか?」
「はい。どうぞ」
バランスを取りながらドアを開けて入ると、着替えを終えた和真はベッドに腰かけていた。
「体調はどうですか?食べられそうなら少しだけでも…」
「ありがとうございます。いただきます」
少しずつ粥を食べ始める和真を、あおいは床に座って見守った。
「…ケホッ…関節の痛みと寒気はありますね。休み明けは必ず病院に行きますよ」
「はい…」
ずっと気にしていた返答をもらえて、ホッとしたあおい。
完食した器を下げると、和真は横になって額にタオルを置いてもらった。
「あの…もう少しだけ、ここにいていいですか…?」
「はい。その代わりに、手を貸してもらえますか?」
差し出された和真の手を、照れながらもそっと握ろうとした瞬間、枕元にあるスマホが鳴った。
和真はゆっくりと体を起こすと、スマホ画面を見て、ため息をつきながら着信に出る。
「はい」
「和真!涼介くんに聞いたわよ!大丈夫なの!?」
「はい。問題ありませ、ん…っ…」
電話の相手は由梨子。
咳き込みそうになるのをグッと堪えていると、あおいが背中を摩った。
「要る物があるなら持って行くわ!お見舞いに行ってもいいでしょう?」
「…必要なものは揃っているので、結構です。休日出勤をさせてしまってすみません。今すぐ帰って休んでください」
「あ!」
話している途中、手の力が抜けてスマホを落としてしまった。
由梨子の耳には、あおいの声がしっかりと聞こえていた。
「…ねぇ、そこにあおいさんいるの?」
「……いますよ」
「代わってもらえないかしら?食事会に行けなかったから、軽く挨拶したいわ」
声のトーンが一気に変わったのを感じ取った和真は、チラリとあおいを見る。
和真と目が合うと首を傾げた。
