スプーンとフォークを持ってきたあおいが声をかける。
「あ、ちょうどよかったですね。熱々なので、気をつけてくださいね」
「ありがとうございます」
あおいの手からスプーンとフォークを受け取れば、自然と手と手が触れ合った。
たったそれだけなのに、あおいの体は小さく跳ねる。
自分よりも大きな手に、あおいはドキドキした。
すぐに考えをやめると、自分も席について食事を始めた。
(変なの……)
なんとなく和真の顔を見れないあおいは、昨日のことがあったからだろうと理由づける。
「…今日は、何かあったんですか?」
「え?」
「機嫌が良さそうだったので」
「顔に出てました!?」
思わず自分の顔に手を当ててしまうあおい。
慌てる様子を見て、フッと笑みをこぼす和真は、シチューのおかわりをお願いした。
そそくさとキッチンへ行くと、また早くなる鼓動を抑えながら、おかわりを注いだシチューの皿を渡す。
「実は、友達にノートのまとめ方を聞いて…すっごくきれいにまとめられたのが嬉しかったんです」
「そんなにですか?」
「はい!前と違って、自分のノートを見るのが楽しみになり…楽しみになった、の……」
今のテンションなら言えると判断したのか、あおいは敬語を言い換えれば、ちらっと和真の反応を見た。
じーっとあおいを見てくる。
「えっと……すみません…今日はテンションが高いみたいで…」
「………」
「その、すみません、…み…」
「……」
「見ないでください!」
両手で顔を覆っても、見つめてくる和真は、まったく視線を逸らさない。
きっと数十秒は経っただろう、少しの間を置いて指の隙間から覗き見ても、ずっと見ている。
「失礼しました」
「…~…っ」
ようやっと和真の視線から解放されると、二人揃って食事を再開し、なんとか食べ終えた。
食器を片付けながら、ケトルに水を入れて火にかける。
「和真さん、今日はコーヒーにしますか?」
「……はい」
少し考えてからあおいの質問に答えた。
すぐにコーヒー缶をとると、覚えた淹れ方でコーヒーを和真へ出した。
「ありがとうございます。明日、休日出勤ですので、朝食はいりません」
「わ、わかりました…」
休日という言葉を聞いてから、初めて学園生活が始まっての休日に気づいた。
(祐希くんに教えてもらったところの復習と…買い出しも行こうかな…)
ようやくきた休日の使い方を考えている間に、和真はコーヒーを飲み終わっていた。
「では、先に。おやすみなさい」
「はい!おやすみなさい」
あおいの頭をポンポンと撫でると、自室へ戻っていった。
撫でられた頭に自分の手を添えるあおいは、嬉しそうな顔になると、充実した一日を終えることを実感した。
