和真の回答を神妙な面持ちで待つあおい。
思いの外、すぐに答えてくれた。
「まぁ…すでに決定事項として話されたので」
「…そう、ですか…」
まるで機械のように話す和真に、あおいはそれ以上何も追求できなかった。
(私でさえ1週間前だったのに…お姉ちゃんは…)
目を閉じて、姉が結婚を聞かされたときの反応を想像してみた。
でも、姉がどのような気持ちになったかまでは、あおいにはわからない。
目を開けて、車の窓から流れて行く景色を見た。
ふと、景色に覚えがあることに気づくのだ。
「そろそろつきます」
「…よく…家を知ってましたね…」
あおいたちの自宅の道のりだった。
結婚のことを直前に聞いた人物とは、思えない行動だ。
「一応、結婚相手なので…ひと通りの個人情報は知らされました」
(…そういうものなのかな…)
そろそろ動じなくなってきたあおいは、何も答えなかった。
和真がブレーキを踏むと、車はあおいの家の前で止まる。
「5分待ちますので」
「え?」
「このまま新居に向かいますから、数日分の着替えを持ってくるといいでしょう…後はこちらで揃えます」
空いた口が塞がらないまま、あおいは和真を見ていた。
またもや表情は変わらず、あおいを見つめ返す和真。
車内はエンジン音と、平行したままのお互いの感情のみが包んだ。
「しん……きょ…?え!?」
「今言った通りです、降りてもらっていいですか?」
呆然としたまま、和真の言葉で無意識に動くあおい。
ぎこちなく動いては、玄関先で立ち止まった。
ショルダーバッグから、家の鍵を探して取り出す。
鍵の差し込み口に挿そうとしても、なかなか鍵が入ってくれない。
カチカチ…カチカチ
あおいは自分の手が震えていることに気づいた。
グッと唇を噛み締めると、もう片方の手で鍵を支えて開錠する。
暗い家の中に入ると、閉じられた玄関のドアに、体がもたれかかりそうになった。
「……今はダメ…小鳥遊さんも待ってる…」
ポツリと呟くと、突き動かされるように、急いで自分の部屋へ向かう。
まずは、自分の着替えを済ませ、クローゼットから少し大きめのカバンを取り出した。、
次にチェストや収納ケースへ手を伸ばす。
手に取った着替えをカバンに詰めていくなかで、ハッとした。
ベッドに置いたショルダーバッグを慌てて開けて、スマホを取り出す。
すぐに、MIENを開いてすみれの既読がついているか確認した。
「あ…」
