【短編】雫玖くんの甘いところ。







気にしなくていいのに。
…気になる。




同じ高校に受かればまた会えるかもと思ったけど…。



第一志望だったそこには、落ちた。




もう会えないんだろうな、とぼんやり思いながら迎えた、第二志望の高校の入学式。
奇跡を目の当たりにする。





「ううん……」





あの頃と同じ、姿、髪型、唸り声。
困っているときにスカートのプリーツをいじるのが彼女のクセなのだと、そのときに気づいた。





「…ねえ、なにしてんの?」




俺のこと、覚えてて当然ってテンションで話しかけたのに。




「あ…ごめんなさい。図書室への行き方がわからなくて…」




…この女、全然覚えてなかった。



俺ってそんな影薄い? って自信を失いそうになったし。
目の前で初対面のように対応するこいつに、腹が立った。