そいつ。
女の子にハンカチを渡して、バイバイ…とあいさつをする。
一挙一動、目が離せなかった。
「…アンタも、あの高校受けるの?」
「えっ…はい! あなたもですか?」
にこにこ。
見ず知らずの俺に愛想振りまいちゃって、バカみたい。
でもそれが俺にとっては心地よかった。
「そ。…がんばろーね」
「はい!!」
じゃあまた、と言って走り去っていく彼女。
最後まで、目が離せない。
結果、そいつはすぐそこの道で盛大に転んで、俺を笑わせてくれたし。
…名前聞くのを忘れたことに気づいたのは、入試が終わったあとだった。



