【短編】雫玖くんの甘いところ。






でも遅刻したくないからって早起きして、少し早めに高校へ向かっていた俺。
中学の学ラン。いつもよりピシッと整えて。




(……なんかいる)




第一印象、小動物。




高校に向かう途中の道で、木に向かって必死で手を伸ばす女子がいた。
セーラー服のスカートを揺らして、「ん~…っ」と精いっぱい伸びをしている。




少し視線を上にずらすと、その行動の意味が分かった。



…ハンカチ。
木の上に、ハンカチが引っかかっていた。




そしてソイツの隣には、小学生くらいの女子が泣きながら立ちすくんでいる。





…見ていられなくて、普段そんなことしないんだけど、なぜか声をかけてしまった。