家を出て少し行くと古ぼけたアパートが建っている。 日雇い人夫が住んでいると言われているアパートだ。
その近くには何だか意味の分からない自販機が置いてある。 何が入っているのかよく分からない。
そしてまた近くには婆さんがやっている煙草屋が在る。 いつもおっさんが数人立ち話をしながら煙草を吹かしている。
煙草屋の隣には一杯飲み屋が在って夕方からおっさんたちが賑やかに飲んでいる。 でもさ、冬になるとみんな居なくなるんだよ。
何処に行くんだろうなあ? アパートにすら帰っては来ない。
「土方の連中は温かい時に一生懸命働いて冬になったら女を買いに行くんだ。」って聞いたことが有る。
花屋敷に泊まり込んで冬の間中、遊び暮らすんだそうだ。 俺たちにはまったく考えられないねえ。
特に嫁さんが居ると遊んでなんかいられないからなあ。 はーあ、どっちがいいのかねえ?
今日もセブンのドアを元気に開ける。 「おはようさーーーーん!」
「ったく、、、元気だけはいいんだからなあ。」 バイト君が冷めた目で俺を見る。
「今日も元気によろしくなあ。」 「はいはい。」
もう9時を過ぎているから朝飯のピークは過ぎている。 今のうちに店の掃除を、、、。
トイレもなるべくきれいに磨いておく。 時々お巡りが来るんだからさあ、、、。
あいつらさあ、何にも考えてないよねえ。 サイレンさえ鳴らせばいいと思って。
そりゃよ、急いでるのは分かるよ。 お漏らししたんじゃ洒落にもならねえからな。
だからってウーウーキャーキャー騒がれちゃ堪んねえつうの。 そのたびに心臓が吹っ飛んでいきそうになるんだからよ。
今日なんてさあ、近くで火事が在ったんだ。 みんな緊張してるんだからさあ、やめてくれよな。
でもね、お構いなしにサイレンを鳴らして来やがった。 「ごめん、トイレ借りるよ。」だって。
使用料を取ってやろうかな。 慈善事業じゃないんだからさ。
昼も近付くといつものように弁当狙いの客がドドドっと押し寄せてきます。 それまでに補充はしておくんだけど、たまに足らないことが有るのよねえ。
「すいませんねえ。 ラスト一個で終わりなんですよ。」 「何で?」
「仕入れが間に合わなかったみたいで、、、。」 「次に入るのは何時?」
「3時くらいになりますねえ。」 「待てねえよ。 今すぐ何とかならねえのか?」
「そう言われてもさあ、、、巡回の都合も有るしね。」 「俺は食べたいの。 今すぐ食べたいの。」
あんまりにもうるさいから近くの系列店に確かめてみる。 有れば幸い、無ければ不幸だ。
有る時にはなんとか融通してもらえるが、無ければ回すわけにはいかない。 大変なんだよ。
でも、こんな類のおっさんたちは説明を聞こうとはしない。 だから終いにはがん切れして摘まみ出すことになる。
やりたくないんだけどさあ。
さあさあお待たせしました。 昼飯戦争の時間ですよーーーーーーー。 フライパンでも叩いて宣伝しようかな?
11時を過ぎるとね、客がドタドタッと増えてくる。 お目当ての弁当を探してあっちへこっちへうるさいんだ、これが。
有れば有るでワーワー言ってるし、無けりゃ無いでキャーキャー言ってくる。 「知らねえよ。 俺に聞かれても。」
突っぱねてやると河豚よりも頬っぺたを膨らませてニンジンよりも真っ赤な顔で怒鳴り出す。 適当に聞いてやって放り出す。
文句を言ってきたって無い物は無いんだからしょうがねえだろう。 分からず屋が多過ぎるんだよ。
1時半を過ぎると昼飯戦争もほぼ終了。 やっとこさ、俺だって昼飯にありつけるってわけ。
掃除をしてレジに小銭を投げ込んでから弁当とコーヒーを頂戴するんだ。 残り物だから文句は言えないなあ。
昼を過ぎると店は静かになる。 仕事中の営業マンがたまに寄っていくくらいかな。 パンとかおにぎりをよく買っていくらしい。
かと思うと奥さんがフラッと買い物に来る。 専業主婦らしいね。
「なんだ、お前 こんな店で働いてたのか?」 悪たれ太郎が飛び込んできた。 「なんだ、知らなかったのか?」
「知らねえもくそも有るか。 コンビニなんて大っ嫌いだからよ。」 「じゃあ入ってくるなよ。」
「お前を見付けたんじゃ素通りなんて出来ねえよ。 おー、決着を付けようぜ。」 「仕事中だ。 後にしてくれ。」
「なんだと? 気取りやがって。 逃げる気か?」 「逃げたってどうせ追い掛けてくるだろう? お前は暇だからなあ。」
「てめえ、言わせときゃいい気になりやがって。」 「いい気もくそもねえよ。 仕事中だ。 邪魔なんだよ。」
「邪魔だってか? てめえ!」 「お、あれは何だ?」
ドアの外を指差してやる。 ちょうどお巡りが駐車場に入ってきたところだ。
「うわーーーーー、逃げろ!」 「だらしねえやつだぜ、まったくよ。」
「ごめん、トイレ借りるよ。」 「はいはい。 どうぞどうぞ。」
太郎が出て行った後、ニヤニヤしながらお巡りが入ってきた。 (まったくこいつらは何とも思ってねえな。)
外は相変わらずいい天気で雲が羨ましい。 気持ち良さそうだよなあ。
スッキリしたのかお巡りはコーヒーを一本買って出て行った。 「たまには100本くらい買っていけ! トイレ泥棒!」
パトカーがエンジンを吹かしているのを見ながら叫んでみる。 もちろん、聞いているわけが無い。
あいつらはパトカーも税金で買ってもらっていることを一応は知ってるんだけどなあ。 それでも自分で買ったような顔をしている。
やっぱり公務員なんだなあ。 人の金は俺の金、人の女は俺の女ってな。
まあどいつもこいつも金の話になると蘇った金魚みたいな眼で食いついてくる。 気持ち悪いだけなんだけどなあ。
あいつらには気持ち悪いって感覚が無いんだろうか? 本気で心配するよ。
まあな、気持ち悪かったら食い付いてこないわな。 それもそうか。
2時を過ぎると学校帰りの子供たちが増えてくる。 可愛いもんだねえ。
「お前には居ないのか?」って? まだまだ訪ねてこないんだよ。
もう10年はくっ付いてるのにさあ。 どうしたものかねえ?
その頃、芳江はレジ打ちで大忙しなのです。 午前中のバイトを終わった人たちが買い物に来るから。
「うーーんと、これとこれとこれね?」 「そう。」
「毎日来てるけど大丈夫なの?」 「毎日買わないと旦那がうるさくて、、、。」
「うちの旦那は文句言わないからあげようか?」 「貰えるなら欲しいわ。」
そんな当たり障りの無い?話をしながらレジを打ちまくるわけです。 大変な仕事ですねえ。
俺だってレジは打つけどそうそう客が並んだりしないから。
たまに子供が買い物に来ます。 アイスクリーム一個とか、飴一つとか、、、。
女の子が緊張しながら財布からお金を出すのを見てると可愛いなあって思うよな。 芳江もこうだったのかな?
けど、あの頃はまだまだコンビニなんて無かったし、、、。
4時を過ぎて帰ってくるとこっちはこっちでやることがいっぱーーーーーーーーーーーーーーーーーーい。
洗濯物を取り込みまして、庭の掃除を軽くやりまして、コーヒーを飲んだら夕食の準備を、、、。
「お、お兄さん 帰ったか?」 冴えない顔の義男がやってきた。
「金か? お前にくれてやる金なんぞ無いぞ。」 「まだ何にも言ってないけど、、、。」
「言わなくてもお前の顔に書いてあるぞ。 金貸してくれーーーーーーって。」 「ねえねえ、兄貴、頼むよ。」
「嫁さんに借りたらどうだ? 康江ちゃんなら優しいから貸してくれるんじゃないのか?」 「それがだなあ、、、。」
「そうか。 康江ちゃんを担保にして借りようって魂胆か。」 「あのあのあの、、、話が違うんだけど。」
「どうでもいい。 とにかくお前には貸せないよ。 返せないんだから。」 「そこをなんとか、、、。」
「引っ込め タコ。」 「タコは無いだろう? 兄貴。」
「お前の兄貴になるんならなあ、康江ちゃんの兄貴になったほうがよっぽどいいわ。 帰れ!」 「ああなあなあ、、、。」
義男を蹴散らすと俺はまた居間に戻ってコーヒーを飲むのであります。 嫁さんに借りた金を返せなくて俺に借りに来るなんて憐れなやつだわ。
その近くには何だか意味の分からない自販機が置いてある。 何が入っているのかよく分からない。
そしてまた近くには婆さんがやっている煙草屋が在る。 いつもおっさんが数人立ち話をしながら煙草を吹かしている。
煙草屋の隣には一杯飲み屋が在って夕方からおっさんたちが賑やかに飲んでいる。 でもさ、冬になるとみんな居なくなるんだよ。
何処に行くんだろうなあ? アパートにすら帰っては来ない。
「土方の連中は温かい時に一生懸命働いて冬になったら女を買いに行くんだ。」って聞いたことが有る。
花屋敷に泊まり込んで冬の間中、遊び暮らすんだそうだ。 俺たちにはまったく考えられないねえ。
特に嫁さんが居ると遊んでなんかいられないからなあ。 はーあ、どっちがいいのかねえ?
今日もセブンのドアを元気に開ける。 「おはようさーーーーん!」
「ったく、、、元気だけはいいんだからなあ。」 バイト君が冷めた目で俺を見る。
「今日も元気によろしくなあ。」 「はいはい。」
もう9時を過ぎているから朝飯のピークは過ぎている。 今のうちに店の掃除を、、、。
トイレもなるべくきれいに磨いておく。 時々お巡りが来るんだからさあ、、、。
あいつらさあ、何にも考えてないよねえ。 サイレンさえ鳴らせばいいと思って。
そりゃよ、急いでるのは分かるよ。 お漏らししたんじゃ洒落にもならねえからな。
だからってウーウーキャーキャー騒がれちゃ堪んねえつうの。 そのたびに心臓が吹っ飛んでいきそうになるんだからよ。
今日なんてさあ、近くで火事が在ったんだ。 みんな緊張してるんだからさあ、やめてくれよな。
でもね、お構いなしにサイレンを鳴らして来やがった。 「ごめん、トイレ借りるよ。」だって。
使用料を取ってやろうかな。 慈善事業じゃないんだからさ。
昼も近付くといつものように弁当狙いの客がドドドっと押し寄せてきます。 それまでに補充はしておくんだけど、たまに足らないことが有るのよねえ。
「すいませんねえ。 ラスト一個で終わりなんですよ。」 「何で?」
「仕入れが間に合わなかったみたいで、、、。」 「次に入るのは何時?」
「3時くらいになりますねえ。」 「待てねえよ。 今すぐ何とかならねえのか?」
「そう言われてもさあ、、、巡回の都合も有るしね。」 「俺は食べたいの。 今すぐ食べたいの。」
あんまりにもうるさいから近くの系列店に確かめてみる。 有れば幸い、無ければ不幸だ。
有る時にはなんとか融通してもらえるが、無ければ回すわけにはいかない。 大変なんだよ。
でも、こんな類のおっさんたちは説明を聞こうとはしない。 だから終いにはがん切れして摘まみ出すことになる。
やりたくないんだけどさあ。
さあさあお待たせしました。 昼飯戦争の時間ですよーーーーーーー。 フライパンでも叩いて宣伝しようかな?
11時を過ぎるとね、客がドタドタッと増えてくる。 お目当ての弁当を探してあっちへこっちへうるさいんだ、これが。
有れば有るでワーワー言ってるし、無けりゃ無いでキャーキャー言ってくる。 「知らねえよ。 俺に聞かれても。」
突っぱねてやると河豚よりも頬っぺたを膨らませてニンジンよりも真っ赤な顔で怒鳴り出す。 適当に聞いてやって放り出す。
文句を言ってきたって無い物は無いんだからしょうがねえだろう。 分からず屋が多過ぎるんだよ。
1時半を過ぎると昼飯戦争もほぼ終了。 やっとこさ、俺だって昼飯にありつけるってわけ。
掃除をしてレジに小銭を投げ込んでから弁当とコーヒーを頂戴するんだ。 残り物だから文句は言えないなあ。
昼を過ぎると店は静かになる。 仕事中の営業マンがたまに寄っていくくらいかな。 パンとかおにぎりをよく買っていくらしい。
かと思うと奥さんがフラッと買い物に来る。 専業主婦らしいね。
「なんだ、お前 こんな店で働いてたのか?」 悪たれ太郎が飛び込んできた。 「なんだ、知らなかったのか?」
「知らねえもくそも有るか。 コンビニなんて大っ嫌いだからよ。」 「じゃあ入ってくるなよ。」
「お前を見付けたんじゃ素通りなんて出来ねえよ。 おー、決着を付けようぜ。」 「仕事中だ。 後にしてくれ。」
「なんだと? 気取りやがって。 逃げる気か?」 「逃げたってどうせ追い掛けてくるだろう? お前は暇だからなあ。」
「てめえ、言わせときゃいい気になりやがって。」 「いい気もくそもねえよ。 仕事中だ。 邪魔なんだよ。」
「邪魔だってか? てめえ!」 「お、あれは何だ?」
ドアの外を指差してやる。 ちょうどお巡りが駐車場に入ってきたところだ。
「うわーーーーー、逃げろ!」 「だらしねえやつだぜ、まったくよ。」
「ごめん、トイレ借りるよ。」 「はいはい。 どうぞどうぞ。」
太郎が出て行った後、ニヤニヤしながらお巡りが入ってきた。 (まったくこいつらは何とも思ってねえな。)
外は相変わらずいい天気で雲が羨ましい。 気持ち良さそうだよなあ。
スッキリしたのかお巡りはコーヒーを一本買って出て行った。 「たまには100本くらい買っていけ! トイレ泥棒!」
パトカーがエンジンを吹かしているのを見ながら叫んでみる。 もちろん、聞いているわけが無い。
あいつらはパトカーも税金で買ってもらっていることを一応は知ってるんだけどなあ。 それでも自分で買ったような顔をしている。
やっぱり公務員なんだなあ。 人の金は俺の金、人の女は俺の女ってな。
まあどいつもこいつも金の話になると蘇った金魚みたいな眼で食いついてくる。 気持ち悪いだけなんだけどなあ。
あいつらには気持ち悪いって感覚が無いんだろうか? 本気で心配するよ。
まあな、気持ち悪かったら食い付いてこないわな。 それもそうか。
2時を過ぎると学校帰りの子供たちが増えてくる。 可愛いもんだねえ。
「お前には居ないのか?」って? まだまだ訪ねてこないんだよ。
もう10年はくっ付いてるのにさあ。 どうしたものかねえ?
その頃、芳江はレジ打ちで大忙しなのです。 午前中のバイトを終わった人たちが買い物に来るから。
「うーーんと、これとこれとこれね?」 「そう。」
「毎日来てるけど大丈夫なの?」 「毎日買わないと旦那がうるさくて、、、。」
「うちの旦那は文句言わないからあげようか?」 「貰えるなら欲しいわ。」
そんな当たり障りの無い?話をしながらレジを打ちまくるわけです。 大変な仕事ですねえ。
俺だってレジは打つけどそうそう客が並んだりしないから。
たまに子供が買い物に来ます。 アイスクリーム一個とか、飴一つとか、、、。
女の子が緊張しながら財布からお金を出すのを見てると可愛いなあって思うよな。 芳江もこうだったのかな?
けど、あの頃はまだまだコンビニなんて無かったし、、、。
4時を過ぎて帰ってくるとこっちはこっちでやることがいっぱーーーーーーーーーーーーーーーーーーい。
洗濯物を取り込みまして、庭の掃除を軽くやりまして、コーヒーを飲んだら夕食の準備を、、、。
「お、お兄さん 帰ったか?」 冴えない顔の義男がやってきた。
「金か? お前にくれてやる金なんぞ無いぞ。」 「まだ何にも言ってないけど、、、。」
「言わなくてもお前の顔に書いてあるぞ。 金貸してくれーーーーーーって。」 「ねえねえ、兄貴、頼むよ。」
「嫁さんに借りたらどうだ? 康江ちゃんなら優しいから貸してくれるんじゃないのか?」 「それがだなあ、、、。」
「そうか。 康江ちゃんを担保にして借りようって魂胆か。」 「あのあのあの、、、話が違うんだけど。」
「どうでもいい。 とにかくお前には貸せないよ。 返せないんだから。」 「そこをなんとか、、、。」
「引っ込め タコ。」 「タコは無いだろう? 兄貴。」
「お前の兄貴になるんならなあ、康江ちゃんの兄貴になったほうがよっぽどいいわ。 帰れ!」 「ああなあなあ、、、。」
義男を蹴散らすと俺はまた居間に戻ってコーヒーを飲むのであります。 嫁さんに借りた金を返せなくて俺に借りに来るなんて憐れなやつだわ。



