青春のたまり場 路地裏ワンウェイボーイ

 レジに居るのも暇なもんですわ。 誰か来ないかなあ?
「こんちはーーーー。」 そこへ来たのは花岡だった。
 「やあ、バイト君。 元気かい?」 「何だよ 偉そうに。」
「俺は偉いんだぞ。」 「顔だけだろう? 何かやったのか?」
「失礼だなあ、これでも議長だぞ。」 「威張るなよ それくらいで。」
「それくらいって何だよ? 議長になるのも大変なんだぞ。」 「吉沢さんに1000万くらい積んだんだろう?」
「そんなんじゃねえってば。」 「まあいい。 議員の世界なんぞ興味も関心も希望も期待も無いから。」
「冷てえなあ。」 「俺はこういう男だからよ。」
 そもそもなあ、その日暮らしのバイト君に議員先生の暮らしなんて分かるわけが無いっつううの。 あんな金しか興味が無いような連中とは付き合わないほうがいいねえ。
何かといえば米搗きバッタみたいにペコペコしやがってさあ、そうかと思えばトノサマバッタみたいに偉そうな顔してさあ。
気持ち悪いし吐きそうだし目障りだし迷惑だし何の得もねえし余計だし。
自民党って言っても何をしたいのか分からないだろう。 あんなのに票を入れる気にはならねえよ。
 それだったらうちで弁当を買ってくれたほうが余程に嬉しいわ。 何のこっちゃ?

 そうこうしているうちに3時を過ぎまして、、、。 そこへ芳江が入ってきた。
「あらあら芳江さん。 今日はまたどうしたの?」 「あなたに会いに来たのよ。」
「家に帰ればなんぼでも会えますがねえ。」 「家じゃあうるさいし我儘だし嫌いだしここでいいわ。」
「何だそりゃ?」 「そういうことよ。 邪魔したわねえ。」
 軽く笑うと芳江はコーヒーとアンパンを買って出ていった。 (あの野郎、、、。)
俺って何なんだろう? 太郎には追い回されるし芳江には冷たくあしらわれるし、生きてる意味有るのかなあ?
ぼんやりと缶コーヒーを飲みながら考えておりますが一向に分かりませんねえ。 分からないほうがいいのかも?
 4時を過ぎたので夜のバイト君にレジを任せて店を出ます。 はーーあ、スッキリした。
いい天気だし遊びに行きたいなあ。 そう思いつつスーパーへ、、、。
 野菜と肉を篭に積んでレジへ行くと、、、。 「あらあら、来たのね?」
「来て悪いか?」 「悪くはないけど珍しいなと思って。」
「時々来てるやんか。」 「そうだっけ? 忘れちゃった。」
「都合のいいやつだなあ。」 「ごめんなさいねえ。 都合が良過ぎて。」
「都合がいいのは顔だけにしてくれ。」 「はいはい。 旦那様。」
 「え? 芳江さんって結婚してたの?」 隣のレジのおばちゃんが改まった顔で聞いてきた。
 「そうなのよ。 結婚してたの 私。」 「してたって何だよ? してたって?」
「ごめんごめん。 してるのよ 私。」 「夫婦揃って変だわ。」
 「変なのよ 私たち。」 「付いていけないわ。」
「ほら見ろ。 同じ店員も付いていけないってさ。」 「それはあなたのことよ。」
「お前もだってば。」 「私もあなたには付いていけないわ。」
「いつ別れてもいいんだぜ。」 「じゃあ今、別れましょう。」
「おいおい、本気で言ってるの?」 「本気じゃなかったら言わないわよ。」
 レジを打ちながら芳江は俺の顔を見た。 「あ、笑ってる。」
「当たり前田のクラッカー。」 「古ーーーーい。」
やっぱり変な夫婦だわ。 別れ話をしながら楽しんでるんだからなあ。 まったく、、、。

 そんなわけで買ってきた野菜と肉を冷蔵庫に放り込みまして、、、。 しばらくはレコードでも聞こうかな。
と思ったけど今夜はあいつも忙しそうだから夜飯を作ってやりますか。 ねえ、芳江さん。
 鍋を持ち出しまして玉葱とニンジンとジャガイモを放り込みます。
そこに豚肉を切ってドサッと放り込んで水をかぶせます。 さあ煮込んでやるぞーーーーーー。
 煮えてきたらコンソメをポンと放り込んでよーーーーーく溶かしましょう。 溶けたら火を止めてルーを入れましょうね。
味見をしてウスターソースとケチャップを少々投げ込んで味を決めたら出来上がりーーーーーー。 さあ、のんびりしましょう。
 レコードを取り出して聞きましょうかね。 今日はかぐや姫ですぞ。
もうちっと前だったらライブで見れたのになあ。 解散した後だもんなあ。
いいよねえ、この平和な暗さ。 派手なのも出てきてるけどやっぱり俺はこっちのほうがいいわ。
うーーーん、たまんねえ。 アイドルもいいけどさあ、フォークソングもいいもんだぞ。
3人でやってるっつうのが堪んねえのよ。 飲みながら聞いたら最高だろうなあ。
 そこへ、、、。 「ただいまーー。」って芳江が帰ってきた。
「シーン。」 「誰も居ないのかなあ?」
どっか寂しそうな顔で芳江が居間の戸を開ける。 「あーーーら、居たのね?」
「居るけど、、、。」 「挨拶くらいしてくれてもいいんじゃないのーーーーーーーー?」
「別れたいって言うからさあ、、、。」 「嘘よ嘘よ嘘よーーーーーーー。」
「嘘なの?」 「こんなねえ、うるさくて頭悪くて頼りない旦那でも別れたくないわよーーーーー。」
「ひでえ言い方だなあ。」 「ひどかった? 許して。 ね、ダーリン。」
 あの丸い顔を近付けてくるから思わず笑ってしまうんだ。 「何よ 意地悪!」
「まあまあ、そう怒るなって。」 そう言いながら顔を引き寄せてやる。
「うわーー、食べられる。」 「美味そうだなあ、お前の顔。」
「え? 何それ?」 ポカンとしているところでキスをする。
 「うーーーーん、やっぱりあなたは私が居ないとダメなのね?」 「もちろんでございます。 お嬢様。」
「だからさあ、そのお嬢様ってのはやめてくれない?」 「いいだろう。 お嬢様なんだから。」
「まったくもう、、、。」 芳江はそう言うと台所へ、、、。
 「何かいい匂いがするわねえ。」 「作っておきましたでございますよ。 お嬢様。」
「だから、、、。」 「いいじゃん。 お前だってほんとは喜んでるんだろ?」
「ないない。」 「ばーーー。」
 カレーの匂いを確かめた芳江は大皿にご飯とカレーを盛り付けてラッキョウをテーブルに置いた。 「美味しそうねえ。 もう私は要らないんじゃなくて?」
「とんでもございませんわよ。 あなたは必要なんです。」 「そう? 夜だけでしょう?」
「ブ、何でだよ?」 「だって可愛がってくれるのは夜だけだから。」
「お前が突っ込まなきゃ朝でも昼でも可愛がってやるけど。」 「あーら、ごめんなさいねえ。 私のせいなのね?」
「自分からくっ付いてきておいてそれだもんなあ。 やってらんないよ。」 「ごめんなさい。 可愛くするから許してね。」
って饅頭みたいな顔でニコッとされたら許さないわけにはいかないんだよなあ。 トホホ。
 カレーを食べたらさっさと風呂を沸かしに行きますですよ。 どうせあいつは用事が済まないと来ないんだからなあ。
ブツブツ言いながら居間に戻ってくると、、、。 「ねえ、あなた 今夜も一緒に入ろうね。」
「は? いっつも一緒に入ってるやんか。」 「それはいっつもお待たせしてるから悪いなと思って、、、。」
「へえ。 悪いなって思ってんだ。」 「そうよ。 こんな私でも。」
「じゃあ俺は先に入ってるからなあ。」 そう言って浴室へ行きますと、、、。
後を追い掛けるように芳江も入ってきましたわ。 「あらあら、どうしたの?」
「今日はつまんないから一緒に入るの。」 「どうもどうも。」