青春のたまり場 路地裏ワンウェイボーイ

 翌5月5日はこどもの日。 晴れ渡った金曜日でございまーす。
今日も二人揃って仕事に追われておりますよーー。 何てったってセブンとスーパーですからなあ。
簡単には休めないのよ。 子供でも居たらちっとは休めるんだろうけどなあ。
 芳江も朝から忙しそうだ。 レジ打ちをしたり事務所に籠ったり、、、。
俺はというといつものように客の相手をしながらレジの番をしてます。 来るのはいつもと変わらないかもなあ。 パト公も同じだし、、、。
 「やい、決着を付けようぜ!」 「お前さあ、たまにはまともな遊びをやったらどうだ?」
「うるせえ! 決着を付けようぜ!」 「ほらほら、香が来てるからどいてやれ。」
「何だと? ワワワワワ、、、。」 「あら、どうしたの?」
「いや、何でも無いっす。 さよなら!」 「変なのねえ。」
 「太郎って香が大の苦手なんだよ。」 「あらあら、何で?」
「さあねえ。 あいつも変わってるやつだから。」 香は陳列棚を見回してお菓子とジュースを買っていった。
 太郎が逃げていった後、パト公がトイレを借りに来た。 「すまんなあ。」
「別に、、、。」 ささくさとトイレに入ると用を済ませたパト公は缶コーヒーを2本買っていった。
(もうちっと買っていけよな。) 睨みつけてからまたまたレジの奥に籠りますか。
 それにしても今日は天気がいいなあ。 角の家にはこいのぼりが上がってる。
真鯉に緋鯉は池の鯉、会いに来いとは誰の恋?
 学生時代は付き合った女も居ないんだよなあ。 別にどうでもいいって思ってたから。
もちろん芳江のことも最初は興味すら無かったんだ。 (なんか可愛いやつが居るな。)くらいでさ。
 それがこうして夫婦になっちまうんだからなあ。 縁ってやつは恐ろしい。
あいつの実家は木村食堂っていう食堂だ。 だから黙ってそこで働いてても良かったんだけど。
 それでもなぜか俺に付いてきた。 俺はこの通り、セブン男子だから金に余裕が有るでも無し。
毎日食って飲んでやりたいことがやれればそれでいいと思っている。 そんな平凡過ぎる俺にあいつは付いてきた。
 俺の何処が気に入ったんだろうなあ? 今だってそれは解けない謎だよ。
何か有ると「あなたはそんなんだから嫌いなの。」とか言ってのけるんだけど気付いたら腕枕で寝てるんだもんなあ。
これだから女の気持ちは分からない。 ああこりゃこりゃ。

 昼になり、二人目のパト公がトイレを借りに来ましたわ。
いっそのこと、月20万くらいで貸してやろうかな。 でもそれじゃあ他の人たちが使えないか。
ほんとにまあ、よくもまあ臆面も無く仮に来れること。 警察だからっていい気になるなよ!
 この辺じゃあ事件を起こすようなやつも居ないから、、、、、、、、、居た。 「やい! 決着を付けようぜ!」
「だからさあ、俺は働いてるの。 営業妨害だぞ。」 「それの何処が働いてるのさ? 遊んでるようなもんじゃねえか。」
「お前みたいな暇人とは付き合えないんだよなあ。 田山さんにでも可愛がってもらったらどうだ?」 「いいからお前と決着を付けるんだ!」
 「よう、太郎じゃないか。 真昼間から何を騒いでるんだ?」 「うっせえ! 邪魔すんな!」
「ほう、太郎ちゃん 誰だか分かって言ってるのかな?」 「俺はお前と話してるんだ! 他には居ねえ、、、、、、、うわーーーーー!」
 太郎は後ろに片平浩太朗が立っているのを見て慌てて逃げ出した。 「馬鹿だなあ。」
「片平さん 何もしないんですか?」 「あんなの虐めても面白くないよ。 すぐに伸びるし頼りないし、、、。」
「それもそうだけど、、、。」 「俺はprofessional wrestlingをやってたんだ。 適うわけが無いよ。」
 笑いながら片平さんは弁当10戸とお茶15本をまとめて買っていった。 (いつも思うけど大食いだよなあ あの人。)
再びレジは静かになりまして俺もやっと昼飯にありつけそう、、、。 ん?
 「ねえねえ弁当まだ有るかな?」 そう言って芳江が飛び込んできた。
「どうしたんだよ?」 「レジが忙しくてなかなか来れなかったのよ。 あらあら有るわね。 これ買っていこう。」 残っていた焼き肉弁当をレジに置きましたわ。
「しゃあないなあ。」 「なあに?」
「何でもねえよ。 買ってけ泥棒!」 「うわ、泥棒だって。 でも美味しそう。 いただきまあす。」
 コーヒーもついでに買っていった芳江の後姿を見詰めながらお腹がグーっと鳴るのを聞いてしまったのでした。
だってだって、いつもより少なめに仕入れておいた弁当が全部売れちゃったんだもーーーーーん。 嬉しや悲しや腹減ったあ。
 そんなわけでだなあ、今日は系列店に弁当を買いに行くのでした。 「あれあれ、珍しいですねえ。」
「そうか?」 「だって弁当を買いに来るなんて、、、。」
 松島店でレジを任されている金沢敏江も不思議そうに俺を見る。 「弁当が全部売れちゃったんだよ。」
「あらあら、それは可哀そうに。」 「店としては嬉しいことなんだけど俺としては悔し過ぎるんだよなあ。」
「そうよねえ。 これって決めた弁当が売れちゃうと悔しいわよねえ。」 「そうだそうだ。」
 そう言って焼き肉弁当を買っていく俺なのであります。 店を出ると猛ダッシュ!
店に帰ると昼からの弁当をどっさり発注しましてね、ゆーーーーっくりと焼き肉弁当を噛み締めようか。 美味そうだなあ。
 さてさて昼休みも過ぎてまたまた暇な時間が訪れました。 今日は子供たちも来ませんですよ。
いつもなら「これだ。」「あれだ。」って賑やかにやってるのに来ませんです。 暇ですわーーーー。
 そこへ、、、。」 「やい! 決着を付けようぜ!」
「また来たのか? 後ろを見てみろ。」 「後ろ? ワワワワワ、、、、、。。」
 「よう。 太郎じゃないか。 何をしてるんだ?」 「ななななななな、何もしてませーーーん。」
「しに来たんだろう? 分かってんだぜ。」 「何にも無いってば。」
 田山さんは太郎を睨みつけると煙草とコーヒーを買って出ていった。 太郎はというと、看板の陰で縮こまってますなあ。
そんなのはほっといてレジの掃除でもするか。 そこへ店長が来た。
「まあまあ、きれいに売れちゃってるわねえ。 発注は下の?」 「3時にはドカーンと来ますよ。」
「そっかそっか。 頑張ってねえ。」 「頑張りません。 俺がやらなくても売れるから。」
「そうね。 あなたは頑張らなくていいわ。」 「何だよ、、、。」
能天気な店長は店内を見回すと出ていきましたわ。 (あんちきしょう、、、。)
 3時近くになると配送トラックが来ましたです。 「ご苦労様。」
運転手に冷たいファンタグレープを渡しまして、荷物をドサッと受け取ります。 それを棚に並べていくんですよ。
順番も数も間違えないように確認しながら並べていきます。 間違えるとどえらいことになるからなあ。
 あっちだこっちだって確かめながら並べていきまして、、、と思ったら何か違う。
よくよく見ると頼んでない弁当が来てるじゃないかーーーーい。 配送センターに電話をしましょう。 まったくもって仕事を増やすなよ 馬鹿。
 「申し訳ありません。 すぐ取りに行かせますから。」 職員が蒼くなっているのが分かる。
社長様には大目玉を食らうんだろうなあ たぶん。 可哀そうに。