青春のたまり場 路地裏ワンウェイボーイ

 「さあて食べるか。」 焼き魚に味噌汁、そして漬物。
やっぱり日本人だねえ。 お茶を飲みながら芳江と向かい合って食べております。
 「居るかーーー?」 誰かの声が聞こえますなあ。
「イルカーー?」 「俺は人間だ。」
「そうじゃなくて、、、。」 玄関に出てみると直之が何か用事らしい顔で突っ立っている。
 「何か用事か?」 「いやな、来月の田植え祭りのお布施を、、、。」
「また小遣いを強請りに参上したのか。」 「そう言わなくてもいいだろう?」
「だいたいなあ、田植え祭りって何だよ?」 「この辺だって田んぼがいっぱい有るじゃねえか。 田んぼには神様が居るんだぞ。」
 「お前みたいな神様か?」 「何だいそりゃ?」
「飲んだくれで女房泣かせで遊び人で、、、。」 「嘘だよ。 俺はちゃんと働いてるぞ。」
「へえ、そうかなあ? こないだも嫁さんが探し回ってたぞ。」 「そんな、、、。」
 「まあいいや。 お布施なんて大それたことは出来ねえから200円だけな。」 「もうちっとくれよ。」
「もうちっともくそもねえよ。 欲しかったら嫁さんを安心させろや。 それが出来たら少しは増やしてやるよ。」
 直之が舌打ちしながら帰っていくと俺はしてやった顔で居間に戻ってきた。 芳江は味噌汁を飲みながらテレビを見ている。
「あらまあ、お嬢様もテレビ大好きですなあ。」 「あなたより面白いから。」
「へえ、いかれた電線マンがか?」 「いいじゃない。 くだらないけど。」
 「電線に雀が三匹止まってたあ。」 「あなたと直之さんと太郎さんね?」
「何でなんだよ?」 「あなたたち仲良さそうだもん。」
「徹底して仲悪いけど。」 「あーらそうなの? ごめんなさーい。」
「軽いなあ。」 「いつも重い重いって言われるから。」
「それは尻だけ。」 「何だって?」
「だからーーー、それは尻だけ。」 「あらそう。 お尻で潰してあげるわよ。」
 そしたら本気で芳江が膝に乗ってきた。 「潰れるーーーー!」
「大げさねえ。 騒ぎながら捕まえてるじゃないよ。」 「だってだって愛してるんだもーん。」
「きもっ、、、、。」 「悪かったな きもくて。」
「分かればよろしい。」 「何だよ偉そうに。」
 今夜もまあこうして喧嘩しながらイチャイチャしているのでありますよ。 夫婦は犬も食わないんだなあ。

 さてさて適当に芳江の相手をしてから風呂の様子を見に行きましょう。 オー、いい具合に沸いておりますよ。
何? 大根でも煮るのかって?
そんななあ、ボコボコ沸かしてどうするんだよ。 入れないじゃないか。
 「さてと、芳江を呼んでこようかな。」 そうそう、芳江をさっさと連れてこようと思ってるんです いつも遅いから。
 「こら、風呂に入るぞ。」 「なあに? 今面白い所なんだから、、、。」
「それはそれでいいけど早く入るぞ。」 「待ってよ。 終わったら行くから。」
「お前の行くからは当てにならないんだよ。 さっさと来い。」 「ったくもう、せっかちなんだから。」
「お前が遅すぎるんだよ。」 「いいじゃない。 テレビ見てたんだから。」
 「そんなにテレビが良かったらテレビと結婚したら?」 「したいけど出来ないのよ。 手のかかる坊ちゃんが居るから。」
「お前のほうが余程に手が掛かるんだけど。」 「そうねえそうねえ。 悪かったわね。」
 「そのまん丸い顔で俺にスタンプでも押すのか?」 「ラブラブスタンプね。 チュー。」
不意にキスをするものだから俺は固まってしまった。 「さあテレビ見てこようっと。」
「ああ、待て待て!」 固まった瞬間に逃げ出す芳江をどうしても止められないんだよなあ。
またまた芳江にやられてしまったわ。 トムみたいだなあ。
 「まったくもう、、、。」 今夜も舌打ちをしながら一人でお風呂に入ってます。
体も洗って天井を見上げていたら芳江が入ってきた。 「お待たせーーーーー。」
「ご機嫌なやつめ。」 「何か?」
「何でもないわよーーーーーだ。」 ゴン。
「いてえなあ。 何するんだよ?」 「あらあら当たっちゃったのねえ。 ごめんごめん。」
「ちきしょうめ。」 「まあまあ怒らない怒らない。 今夜も可愛がってあげるから。」
「可愛がってやってるのは俺のほうなんだけどなあ。」 「ご不満ですか?」
「お嬢様の体には満足してるんだけどなあ。」 「なあに? もうちっとはっきり言ってごらんなさい。」
「体の割には性格がよろしくないからねえ。」 「お互い様でしょう? 勝手なこと言わないでよ。」
 体を洗った芳江は天井を見上げたまま俺の隣に体を沈めてきた。 「萌えちゃうなあ。」
「いいわよ。 ガソリンをたーーーーーっくさん浴びせて燃やしてあげる。」 「俺を殺す気か?」
「だって燃えるんでしょう?」 「そうじゃなくてだなあ、、、。」
 そう言いながら脇をツンツンしてみる。 「今夜も可愛がってね。 ダーリン。」
目を瞑って顔を寄せてくるから俺は思わず頬っぺたを舐めてしまった。 「もっと舐めていいわよ。」
「挑戦的だなあ。」 「だって物足りないかなあ?って思って、、、。」
 「ワオ、、、。」 「ブ、、、。」
「やられたわ。」 「私の勝ちね。」
「そのようでございます。 お嬢様。」 「だからお嬢様はやめてってば。」
「いいじゃないか。 お嬢様なんだから。」 「分からない人ねえ。」
「お前の気持ちは十分に分かってるよ。」 「じゃあさあ言ってみて。」
「さあ今夜も思い切り甘えちゃおうねえ。」 そう言うが早いか、俺は浴槽を出て脱衣所へ、、、。
「ワーーーー、ずるいずるい。」 後から芳江も追い掛けてきた。
 そこで不意に芳江のほうを向いてやると、、、。 「あぐ、、、。」
追い掛けてきた芳江が飛び込んできた。 「やあ、芳江さん。」
 素っ裸で抱き合うのも何年ぶりだろうなあ。 顔を上げた芳江は何か言いたそうにモゴモゴしている。
「いいじゃん。 しばらくこのまんま。」 「、、、、、、、、、、。」
 俺がそう言うと芳江は諦めたように肩に顔を埋めた。
そしてそしてその夜も甘く愛し合ったのでありました。 フー。