青春のたまり場 路地裏ワンウェイボーイ

 5月になりました。 ゴールデンウィークですねえ。
憲法記念日を中心にこんなに休みをくれたのに俺も芳江も仕事で走り回ってます。 ああ忙しい。
 休みともなれば朝から行列が出来たりしてねえ、、、。 そこまではないけどさあ忙しいんだよ。
その代わり昼はめっちゃ暇。 昼飯戦争が無いから。
そうなんだよ。 休みだからさあ昼飯を買いに来る必要が無いだろう? んでもってパト公はいつものようにトイレを借りに来る。
そしてなぜか缶コーヒーを5本くらい買っていく。 何なんだこれ?
 夕方になると奥さんたちが弁当を買いに来る。 ご主人は仕事で忙しいらしい。
俺たちだけじゃなかったのね? そこは一安心。
 と思ったら芳江も何か買いに来た。 「オー、珍しいなあ。」
「そうなのよ。 雑誌を買いたくて。」 「エッチなやつか?」
「あなたじゃないから買わないわよ。」 「お前も勉強しといたほうがいいぞ。」
「何を?」 「冴えない旦那の喜ばせ方。」
「あなたを見てたら分かるわよ。 いつもありがとうね。」 そう言って頬っぺたにチューしてから帰る芳江なのであります。
「あのやろう、、、。」

 さてさて今日は暇なので4時にはバイト君を呼び出して帰りましょうかね。 店を出てブラブラと、、、。
何や分らんアパートの脇にはこれまた何や分らん自販機が置いてありますなあ。 芳江が居ない時に覗いてみようか。
 一応大通りと呼ばれている通りに出てみる。 相変わらず信号は有って無いような物。
それでもパト公が見張っている時にはちゃんと止まるんだよなあ みんな。 普段からそうしろや。
 公民館の辺りを歩いてみる。 じいさんたちが立ち話をしている。
「山田さんも災難だったなあ。」 「そうだそうだ。 あの犯人はまだ捕まらんらしいねえ。」
 じいさんたちは俺が近付いてくるのを見て取ると急にひそひそと話し始めた。 (何だこいつらは?)
俺がじいさんたちを睨みつけてから行き過ぎるとまたまた大きな声で話し出すのであります。 気分悪いよなあ。
 「ほんとだよ。 週刊誌を投げ込んで火事を起こすなんてなあ。 近頃の若いやつらは何をするか分からん。」
(お前らだって同じだろうがよ。 こないだの市長さんは何だ? 嫁さんを殺して捕まったじゃないか。 年寄りだって何をしでかすか分かったもんじゃないなあ。)
 憂鬱な気分になって歩いていると、、、。 「オー、貴様 決着を付けようぜ!」
「またお前か。 決着は付いてるだろう?」 「うっせえ! 付いてないから付けようって言ってるんだ!」
「うざいなあ。 引っ込めモヤシ。」 「何だと? 俺はなあ、、、。」
 「おらおら、母ちゃんが迎えに来たぞ。」 「何だと? うわーーーーー。」
そう、太郎は母ちゃんが死ぬほど怖いんだとさ。 真昼間から遊んで歩いてるんだもん しゃあねえよ。
 ブラブラと床屋にまでやってきた。 「そういえば髪切りたいなあ。」
しかし店を覗いてみるとソファーにまで客が並んでいる。 いっぱいなんだなあ。
 そこでだ。 グルリト一回りして日雇いアパートの近くにまでやってきた。
「この辺りには訳の分からん自販機が置いてあったよなあ?」 見回してみるとアパートの陰に隠れるようにして置いてありましたわ。
 うーーーん、何を売っているのかはよく見えないなあ。 試しに、、、。
100円を入れてボタンをポチっとな。 すると、、、。
 取り出し口に出てきたのはなんとまあいやらしい雑誌ではあーーーーりませんか。 苦笑いをしながらアパートの陰で捲ってみましょうか。
(真昼間から鼻血ブーだな。) 数ページ捲ったところで飽きてしまった俺はその雑誌を窓の開いている部屋に投げ込んで逃げてきた。
 後日談になるがその部屋はどっかから流れてきた女の部屋だったらしい。 しかしまあ女がどうしたのかは聞いてない。
ブラブラと家まで戻ってきた俺は居間に入ると椅子に座って天井を仰いだ。 「ただいまーーーーーーーー!」
そこへ芳江も帰ってきたらしい。 今晩はやつが夕食を作るらしいのでありますよ。
 「今晩は何にしようかなあ?」 「お前。」
「なあに? 私を食べるの?」 「塩焼きがいいかなあ? 唐揚げがいいかなあ?」
「そうねえ。 サラダがいいかもよ。」 「ガク、、、。」
 「何でガク、、、なのよ?」 「だって味付きのほうがいいかと思うから。」
「失礼ねえ。 サラダでも十分に味は付いてますけど、、、。」 「油だろう?」
「ドレッシングだから油じゃないわよ。」 「馬鹿だなあ。 サラダ油が入ってるじゃないか。」
「そうねえそうねえ。 博士には負けるわ。」 「また、、、。」
 芳江はバッグを置くとキッチンに向かった。 「久しぶりに魚でも焼こうかな。」
俺はというとそんな芳江の後ろをウロウロ、、、。 そしたら芳江が笑いながらお尻を振ってきた。
 「おー尻振り振りーーーー。 お尻振りーーーー。」 「間寛平の見過ぎよ あなた。」
「お前だってそれを狙って尻を振ったんだろう?」 「痒いから振っただけよ。」
「じゃあ俺様が掻いてあげるわ。」 「やあねえ、変態。」
「どっちがだよ?」 「そうねえ、、、、どっちもだわ。」
澄ました顔で言い切る芳江に俺はずっこけた。 「こけなくてもいいじゃない。」
 「こけるわ。 いつもなら「あなたよーーーー!」って言ってくるお前が、、、。」 「分かったからおとなしくしてて。」
「どういう意味だよ?」 「そういう意味よ。 料理が出来るまで待っててね。 ワンちゃん。」
「ワンワン。」 「似てないわよ。 もっと研究しなさい。」
「厳しいなあ。」 「芸事は厳しいの。 分かって。」
 「はいはい。」 取り合えず返事だけして俺は芳江の後ろに立った。
「ツンツンは無しよ。」 「じゃあ、、、。」
そっとお腹を撫でてみる。 「やあねえ。 やりたくなるでしょう?」
「それ!」 その手を上に上げたら包丁が飛んできた。
「危ないなあ。 もう。」 「ごめんねえ。 変態坊ちゃんを殺すところだったわ。」
「危ない嬢ちゃんだこと、、、。」 「何か言った?」
「言ってません。」 「危ない嬢ちゃんって言ったわよねえ? 今夜のエッチはお預けよ。」
 やっぱり地獄耳の芳江はまん丸い顔で睨みつけてくるのでありますよ。 ああ、魔女みたい。
奥様は魔女ですわーーー。 怖い怖い。

 さてさて風呂の様子を見に行くと鯵の焼ける匂いがしてきましたわ。 美味そうだなあ。
取り合えず水を入れて準備だけはしておこうか。 鼻歌を歌いながら水を入れております。
 夜の道をおっさんたちが歩いておりますねえ。 日雇いの連中かな?
何処で稼いでくるんだろう? 酒を飲みながら歩いておるようですが、、、、。
あんなのにウロウロされたら危なくてしょうがないわ。 こないだもパト公と喧嘩してただろう?
 何を考えてるか分からないんだからさあ、、、気を付けてくれよな パト公も。
居間に戻ってくると芳江が焼けた鯵を皿に載せております。 「美味そうだねえ。」
「、、、。」 「何か言ってよ。」
「ふん。」 「え? ふん?」
「そうよ。 あなたはふん。」 「ふんか、、、。」
 俺が居間の片隅に置いてあるテレビを点けると、、、。 「あたしよりテレビのほうがいいのね?」って聞いてきた。
「だって俺はふんなんだろう?」 「あの、、、それは、、、。」
「それはもくそもねえよ。 ふんなんだろう?」 「だからそれは、、、。」
 俺が睨んでやるとまん丸い顔を近付けてきた。 「ブ、、、。」
その泣きそうなまん丸い顔を見た俺は思わず吹き出してしまった。 「何よ? また笑ったわね?」
 「怒ってんだか笑ってんだか泣いてるんだか分かんねえんだもん。」 「ひどいわひどいわ。 こんだけ泣かしておいて、、、。」
「ドラマ見過ぎだよ。」 「ドラマじゃないもん。 泣いてるんだもん。」
 「分かった分かった。」 そう言って芳江の肩を抱いてやります。
「あなた、、、。」 今夜はこのままでいいかな?
 「お腹空いた。」 「グーーーーーーー、、、。」
「いい所で雰囲気壊しちゃったわね。 ごめんなさい。」 「分かったならよろしい。」
「偉そうに、、、、。」