青春のたまり場 路地裏ワンウェイボーイ

 あんちきしょうめ、肉団子みたいな顔してるけど怒れないんだよなあ。 泣かれてくっ付いた俺だから、、、。
俺が夕食を準備してテーブルで待っていると、、、。 「あらあら待っててくれたの?」って芳江が帰ってきた。
 「そりゃあそうですよ。 お嬢様のポチですから。) 『誰がポチなの?」
「俺だよ。 俺。) 自分を澄ました顔で指差してみる。
「あっそ。」 そんな俺に気付かぬ振りをして芳江はご飯を食べ始めた。
 「たまには気付いてよ。」 「何かやったの?」
「もういいわ。 知らねえ。」 「あなたはいつもそうなのよねえ。 気付いてほしいなら真面目に働いてて。」
「いーーーーーーーっつも真面目に働いておりますけど。」 「何処がよ? 遊んでるじゃない。」
「遊んでなんかおりませんがねえ。」 「そう? そうなのかなあ? 言い切れる?」
「嘘だと思うなら店長に聞いてみろや。」 「言ったわね? 明日聞いてやるんだから。」
 芳江が顔を近付けてきたものだから俺は思わずご飯を噴き出してしまった。 「きったなーーーーーーい。 何すんのよ?」
「お前がその肉まんみたいな顔を近付けてくるから悪いんだよ。」 「言ったわね? 今夜のエッチはお預けね。」
「待て待て。 それとこれは違うだろう?」 「一緒です。 私は怒ったのよ。」
「そのまん丸い顔でか?」 「丸でも三角でもいいでしょう。 とにかくエッチはお預けよ。」
「怒っちゃった。」 「いくら私でも怒るわよ。 話し掛けないでね。」
 ぶすくれた顔で芳江は食事を続けてます。 俺は何とか視野の中に入ろうとしてるんですけど、、、。
食事を済ませた後も芳江は膨れっ面のまま。 そこで俺が後片付けをしております。
 「冷たいなあ、、、。」 ブツブツ言いながら皿を洗っていると、、、。
「あらあら、洗ってくれたのねえ?」 「怒らせちゃったから、、、。」
「後は私がやるわよ。」 「いいよ。 もう終わるから。」
 「ごめんなさいねえ。 洗い物までさせちゃって、、、。」 「いつものことだから。」
「じゃあさあ今夜は一緒にお風呂に入りましょうねえ。 坊ちゃん。」 「誰が坊ちゃんだよ?」
「あなたしか居ないでしょう? 私の大事な大事なお坊ちゃんなんだから。」 「都合がいいのねえ?」
「何か言ったかな?」 「何も言っておりません。」
「都合がいいのね?って言ったじゃない。」 「うわ、こいつ聞いてやがる。」
「ごめんなさいねえ。 悪口だけはよく聞こえるのよ。」 「悪口じゃないけど、、、。」
「まあいいわ。 お風呂沸かしてね。 一緒に入ってあげるから。」 「はいはい。」
って言いながら自分の部屋で本を読み始めた芳江を見ていると、、、。 「なあに? 覗かないでよ。 エッチ。」
「本を読んでるのねえ。」 「そうよ。 お勉強しなきゃ、、、。」
「エッチのか?」 「失礼ねえ。 あなたと違うんだから。」
「そうねえそうねえ。 お嬢様だもんねえ。」 「それはやめてってば。」
 いつものように膨れっ面の芳江を見てから風呂を沸かしに行くんだ。 ああ、しんど。
でもまあ芳江は何も考えてないなあ。 俺がこんだけ動き回ってるのに、、、。
 風呂釜に火を入れてそれからのんびりと外を見回しております。 寂しそうな野良猫が一匹、、、。
(あいつ、俺みたいだなあ。) 何となく親近感を覚えてしまう瞬間なのですよ。
 かと思えば遠くで野良犬が喧嘩してる。 ウーだのワンだの元気にやってるなあ。
『人も歩けば野良犬に当たる。』とでも言うべきか。 あっちこっちに野良犬のフンフンが転がっておるこの町も何とかしてくれねえかなあ?
たまによう、トラックが踏んでいくからあっちこっちが臭くなって堪んねえんだよ。 こないだは店の駐車場にそいつを踏んだ車が入ってきて掃除が大変だったんだからな。
 30分ほど経ちまして芳江を呼びに行きます。 「お嬢様、お風呂が沸きましたです。」
「だからさあお嬢様はやめてって言ってるでしょう? 分かんない人ねえ。」 「じゃあ何て呼ぶんだよ?」
「そうねえ、お前、、、でいいわ。」 「てめえ、風呂だぞ。」
「似合わないからやめてよ。」 俺がマジになっても芳江は笑いを堪えるのに必死のご様子。
 兎にも角にも今夜は一緒に入れるのである。 年に何度有るのやら?
「見ないでね。」って言いながら俺の方を向いて服を脱ぐから堪んない。 我慢できなくなった俺は芳江を押し倒した。
 「いいわよ。 あなた。」 今夜は妙に素直だなあ。
そろそろお子様が欲しくなったのかな?
 汗まみれになって浴室へ、、、。 「あなたのせいで疲れちゃったわ。 早く寝たいなあ。」
「お風呂が先。」 「そう言うけど私の身にもなってよ。」
「あんだけ萌えといてか?」 「あなたが激し過ぎるの。」
「じゃあさあ、もっと優しい幸一君にでも拾ってもらったらどう?」 「あの人は気持ち悪いから嫌。」
「はっきり言いますなあ。」 「だって私にはあなたしか居ないからね。」
 ぼんやりと天井を見上げている芳江の肩を抱いてみる。 「ずっとこのままで居たいなあ。」
「ふやけちゃいますが、、、。」 「そしたら脱水すればいいのよ。」
「洗濯物じゃないっつうの。」 「そうよねえ。」
 何だか今宵は平和に過ぎそうであります。 いっつもこんな風だったらいいのになあ。
翌日、仕事が休みだった芳江は予言通りにコンビニに来た。 「ワオ、、、。」
「何よ? 怪獣じゃないんだから。」 「そうねえそうねえ。」
「店長さんは、、、、、?」 そっと奥の部屋を指差してみる。
 トントントン。 「はーーーい。」
間抜けな店長の声が聞こえる。 芳江はドアを開けると中へ入っていった。

 太陽がくれた季節で恋をして冬が来る前に別れちゃったのよねえ。 あの人は今?
うーーーん、南国土佐に置き去りにされたのかも? それはそれは悲しい雨の物語ねえ。
いったい何を洒落天高? 「えーーー? そうなんですか? 見直しちゃったわ。」
「でしょうでしょう? だからね、あの旦那さんも大した男なのよ。」 「そっか。」
 しばらく店長と話し込んでいた吉江が勢いよくドアを開けた。 「いてえ!」
「え? 何々?」 「お前なあ、ドアくらい静かに開けろよ。」
「どうしたの?」 「レジ前の掃除をしてたらドアが頭に直撃したんだよ。」
「あーーーーら、ごめんなさいねえ。」 「軽いやつだな、、、。」
「コーヒー買ってあげるから許してよ。」 「安、、、。」
「何? ダイヤモンドのほうが良かった?」 「いいえ、別に。」
 「あらあら、吉江さん 怒らせちゃったの?」 後ろから店長が出てきた。
「そんな時はね、、、。」 店長が芳江に耳打ちをしている。
頷く吉江が俺のほうを向いた。 その変顔に思わず俺は吹き出してしまった。
「ほらね。」 「ありがとうございます。」
吉江は俺の目を見詰めてから店を出て行った。