青春のたまり場 路地裏ワンウェイボーイ

 「飛んで飛んで飛んで回って回って回って落ちるーーーーー。」 「馬鹿。」
「馬鹿でけっこう。 天才は要らない。」 「何訳分んねえことを騒いでんだよ?」
「いいじゃねえか。 たまには俺だって騒ぎたいやなあ。 「いっつも騒いでるお前がか?」
「いっつもとは何だ いっつもとは?」 「ほらほら頭に血が登ってきたぞ。」
 「うっせえなあ。 消え失せろ。 馬鹿。」 「それしか言えねえのか?」
「お前にはこれだけもくそもねえんだよ。 消えやがれ。」 「分かった。 消えてやるよ。」
 そう言うと田原敏夫はクルッと一回転。 「何してんだ?」
「消えたぞ。 見えないだろう?」 「そうねえそうねえ。 見えないねえ。」
そう言いながらパンチをお見舞いする。 こんなアホなやつの相手をしてるなんてどうなんだろう?
 2,3発お見舞いしてからさっさと追い出す。 この町にはこんなやつしか居ないのかね?
4時近くになるといつもの子供たちが100円を持っておやつを買いに来る。 見てると可愛いもんだねえ。
俺もああなりたいよ。」

 子供たちを見ていたらまたまた芳江が入ってきました。 「あらーーー、可愛い子。」
「お前のか?」 「そうねえ。 あたしたちも欲しいわねえ。」
「じゃあ頑張ってくっ付いてよ。」 「あなたに?」
「そうだよ。 真面目にこうやって働いてるんだから。」 すると、、、。
 芳江がレジ裏に入ってきて俺にピターーーーっとくっ付いた。 「くっ付いたからお子様も来てくれるかなあ?」
「うわーーーーー、カップルが居るーーーーー。」 フラリト入ってきた店長が素っ頓狂な声を挙げたものだから芳江がひっくり返った。
 「あなたにも彼女が居たのねえ?」 「いえ、嫁さんですわ。」
「えーーーーー? お嫁さん?」 「店長、驚き過ぎ。」
 「だってだって聞いてないんだもーーーーん。」 「3年前に話しましたやんか。」
「え? そうだった? そうだったかな?」 「もう、、、。 忘れっぽいんだから。」
「あたしねえ、年だから許して。」 店長はそう言うと芳江に缶コーヒーを渡した。
 「ごめんなさいねえ。 いきなりびっくりしたでしょう?」 「そりゃまあ、、、。」
「ところでさあ、お前は何しに来たんだ?」 「うーーーんと、びっくりし過ぎて忘れちゃったわよ。」
「そっか。 じゃあこのパンでも食べて思い出してよ。」 「ドラえもんじゃないのよ あたし。」
「ドラえもんみたいなもんじゃんか。」 「それってさあ、ブスってこと?」
「そうとも言うかなあ。」 「あのねえ、あたしはあそこまでまん丸じゃないから。」
「あらあら怒っちゃった?」 「怒るわよ。 でもあなた優しいから許してあげる。」
 そんなこんなで俺と芳江は店でもメロドラマを演じているのであります。 土曜ワイドの見過ぎかね?
たまにはドロドロと愛し合ってみたいもんですなあ 芳江さん。 「そうねえ。 あなたとラブドラマを演じてみたいわ。」
 芳江が洗剤なんかを買って帰った後、美也子が入ってきました。 「おー、久しぶり。」
「そうでしたねえ。 何年ぶりかな?」 「都落ちでもしたのか?」
「失礼ね。 たまの休みに帰ってきたのよ。」 「ほう、玉が居るのか?」
「たま?」 「お前んちに居なかったっけ? 秋刀魚を盗みに来る猫。」
 「ああ、おじいちゃんのペットね。 死んだわよ。」 「そうか。 呆気ないもんだなあ。」
「だってもう15年も前のことよ。」 「そっか。」
 「こらーーーーーー! 決着を付けようぜ!」 「また来たのか? お前なあ、喧嘩するのもいいけどたまには働けや。」
「偉そうに言うんじゃねえよ! 出てこい!」 「いつの決着を付けるんだ?」
「えっとえっと、、、。」 「ほら見ろ。 何も考えねえで暴れてるやつの相手をする暇なんかねえんだよ。 消えやがれ。」
 「何だと? 俺を誰だと思ってんだ?」 「誰とも思ってねえよ。 消え失せろ 溝猫目。」
「溝猫? 誰に言ってんだ?」 「まあまあ威勢のいいお坊ちゃんねえ。」
 「お坊ちゃん?」 太郎はふと声の主を探した。
「うわ、美也子じゃないか。 どどどどどど、、、。」 「何をそんなに慌ててるの? 太郎君。」
「いや、その、別に。 じゃあ、、、。」 美也子の姿を認めると太郎はすっ飛んで逃げていった。
 「何だいそりゃ?」 「太郎君ねえ、高校生の頃 私に意地悪してお父さんにこっぴどく叱られたことが有るのよ。」 「そうなんだ。」
「うちのお父さんねえ、頭に血が上るとプロレスラーでも止められないくらいに暴れるのよ。 だから、、、。」 「そりゃあ太郎も怖がるなあ。」
 うちの親父は何か起きても怒れないお人好しだったなあ。 金を借りられても返せって言えなかったんだ。
サラリーマンだったのにねえ。 ところがところが出世しなかった。
 最後は窓際族でお荷物だって言われてたよな。 そんな親父の子供なんだよ 俺。
今日もパト公がいつものように平然とトイレを借りていきますねえ。 1回10万円の札でも下げようかな。
あいつら怒るだろうなあ。 「どの面下げて金を巻き上げる気だ!」ってなあ。
 じゃあさあサイレンを鳴らしてトイレに来ることをばらしてやろうか? 上の連中にはしこたま渋い顔をされるだろうなあ。
だって緊急時以外はサイレンを鳴らしちゃいけないんだもん。 そりゃそうだろう。
 四六時中鳴らされたら喧しくて堪らない。 ピーポーピーポーってな。
ウーとかピュンピュンとかあっちでこっちで鳴らされたらノイローゼどころじゃないぜ。 なあ、パト公さんよ。
 ってなわけで今日も仕事を終わりまして夜のバイト君にバトンタッチ。 よろしく頼んだよ。
家に帰ってくると今夜も夕食を作るんです。 トホホ、、、、、、、、、、。
 煮物を作って出来上がった頃に芳江が帰ってきました。 「ただいま。」
「お帰りなさいませ。 お嬢様。」 「なあに? よそよそしいのねえ?」
「だって怒らせちゃったからさあ、、、。」 「あれはいいのよ。 何でもないの。」
「え? あんなにブスくれておいて❔」 「ああああああ、分かんなかったのね? 残念。」
「何だそりゃ?」 「まあいいわ。 あなたなんだもん。 分からないわね。」
芳江はつまらなそうな顔で鍋の蓋尾を開けた。
 「うわーーーー、今夜も美味しそうな煮物ねえ。」 「でしょう?でしょう?」
「早く食べたいわねえ。」 「じゃあさあ3回回ってチンして。」
 すると、、、。 「3回回ったからチーン、、、ね。」
芳江がキスをしてきました。 「亜夢亜夢、、、。」
「なあに?」 「いきなりのキスに萌えちゃいそうだわーーーー。」
「きも、、、。」 「何だよ? きもいってか?」
 「あなたの宇宙人キャラはきもいわよ。 やめてくれる?」 「ごめんなさーーーーーーい。」
「素直でよろしい。」 「偉そうに、、、。」
 「私は偉いのよ。 知らなかった?」 「そうねそうね。 どっかの小さな小さな食堂の御令嬢だもんねえ。」
「それは余計なの。 分かってないんだから、もう。」 「分かってたまるかってんだ。」
「じゃあ夜のお楽しみはお預けね。 あ、な、た。」 「待て待て。 それとこれは話が違うぞ。」
「いいのよーーーー。 どうせダメって言ったって私はあなたに襲われるんだから。」 「誰が襲うんだよ?」
 「セブンで働いてらっしゃるどっかの貧乏な男の人。」 芳江はそう言いながら居間を出て行った。