月曜日です。 健太はキャンバスをランドセルに入れて学校に行きました。
教室の前にまで来ると泣いている男の子が居ました。 4年生の俊介君です。
「どうしたの?」 「今日さあ、音楽が有るんだよ。 でもね、持って来てって言われたリコーダーを忘れて来ちゃったんだよ。」
「そっか。 ぼくに任せて。」 「何か出来るの?」
健太は俊介君が見守る前でキャンバスにリコーダーの絵を描きました。
すると、、、俊介君のランドセルの中でカタっと音がしました。
「あ、、、リコーダーだ。 ありがとう。」 嬉しそうな俊介君が教室に入るのを見届けてから健太も教室に入りました。

 さてさて1時間目は国語の時間です。 健太も教科書を出して準備をしています。
後ろのほうでは達也君と健一君がボールで遊んでいます。
授業開始のベルが鳴りました。 「さあさあ、みんな席について。 勉強を始めますよ。」
担任の松山先生が入ってきて声を掛けた時、、、。
達也君が蹴飛ばしたボールがロッカーにぶつかりました。 ガシャーン。
何かが落ちる音を聞いてみんながそちらを振り向きました。
「誰でしょうね? ロッカーの上に物を載せていたのは?」 「やべえ!」
松山先生が落ちていた袋を取り上げようとしますが、それより先に健太が拾い上げました。
「松井君の荷物だったの? それはきちんとあなたのロッカーに入れなきゃダメよ。」
健太は中を見られなかったことだけで安心してしまいました。 そう、そこにはあのキャンバスが入っていたのです。

 1時間目が終わって廊下に出てみると、またまた俊介君が鳴いています。 どうしたんでしょうか?
 「どうしたの?」 「せっかく持ってきたリコーダーが消えちゃったんだよ。 先生には怒られるし、みんなには笑われるしどうしてくれるんだい?」
「そんなバカな、、、。」 健太は慌ててキャンバスを確かめると、、、。
描いていたはずのリコーダーが消えていました。 さっき、ロッカーから落ちて拾った時に触ってしまったらしいのです。
 「ごめん。 消えちゃってた。」 「もういいよ。 健太君には何も頼まないから。」
俊介君は泣きべそをかきながら教室へ入っていきました。

 昼休みのことです。 給食を食べ終わったみんなはグループに別れて遊んでいます。
健太はそっとキャンバスを取り出して眺めています。 そこへ追いかけっこをしていた順子ちゃんと幸恵ちゃんがぶつかってきました。
「ごめーん! 健太君!」 鉛筆を持って追い掛けていた幸恵ちゃんの手がキャンバスに当たり、、、。
教室に巨大なブロックが現れました。 「キャー!」
順子ちゃんの悲鳴を聞いてみんなが健太の机を見ました。
「何だこれ?」 好奇心旺盛な太一君がそのブロックを取り上げようとした時、ブロックが消えました。
「うわ、!」 いきなりブロックが消えたので太一君は順子ちゃんの上に、、、。
「キャー! 変態!」 「こら! 太一! 何してるんだ?」
 悲鳴を聞いて飛んできた6年生担任の小萱先生が太一君を叱りました。
「何もしてねえよ。」 「今、佐々木さんの上に乗っただろう?」 「それは、、、。」
「お前なあ、騒がれるようなことをするんじゃない。 ただでさえそそっかしいんだから。 気を付けろ!」
「俺は何もしてねえよ。 信じてよ。」 「悪ガキのお前が何もしてないって?」
「そうだよ。 大きなブロックが出てきたからそれを取ろうと思って、、、。」 「ブロックなんか何処にも無いじゃないか。 嘘吐くな!」
「ほんとだってばよ。」 「太一はさあ、順子が好きなんだよ。 だから、、、。」
「まあいい。 騒がれるようなことをするな。 いいな。」 「チェ、、、。」
 みんなは叱られる太一君を見ながらあっちこっちでクスクス笑っていました。

 さてさて、授業も終わってみんなは昇降口へ、、、。
「確かに在ったんだ。 ブロックは、、、。」 「太一君 まだ言ってるの?」
幸恵ちゃんが怪訝そうな顔で太一君に言いました。 「在ったんだよ。 幸恵も見ただろう?」
「ごめん、私見てない。」 「えーーーーー?」
太一君はそれを聞いてしょんぼりしてしまいました。
 健太はというとどうしていいのか分からずにみんなから離れています。 「健太は知ってるのかな?」
「さあねえ。 あいつのことだから気付いてないんじゃないの?」 「だよなあ。 あいつが気付いてたら言うはずだもん。 知らないんだよ。」
達也君も健一君も太一君を囲んで家へ走って行きました。

 部屋に戻ってきた健太はキャンバスを机の上に置くと幸恵ちゃんが描いたブロックを思い出しながら描いてみました。
「キャー!」 今度はお母さんの悲鳴が聞こえてきました。
「どうしたの?」 健太が慌てて見に行くと、、、。
お母さんはブロックの上に載せられて下りれないようです。
変ないたずらはしないほうがいいよねえ?
じゃあ、また。