げっ! 誰か来た!
 私は思いっきり亮平を突き飛ばした。
 み、見えた? バレた⁇

「……何やってるんですか? 結衣子先生……」
「あ、さ、坂上先生……」
「なんだ、聖かよ。驚かせんな」

 入ってきたのは6年生の担任であり、私達の二期先輩であり、亮平の親友でもある聖くんだった。

「亮平……ここで何してる?」
「結衣子を迎えにきたんだ。もうじき終わるだろ?」
「……それだけに見えなかったが……」
「先生、何してるの? 早くしてよー」

 え、後ろに生徒がいる⁉︎

「あ、あぁ。悪かった。……結衣子先生、うちのクラスの中村が体調不良で、診ていただけますか?」
「結衣子先生、この人誰?」

 中村くんが尋ねる。
 うん。まあ、気になるよね。

「私の旦那さんよ。ここの卒業生なの。今日は校長先生にご挨拶に来たのよ」

 嘘じゃないはずだ。かなり苦しいけど……。

「へぇ〜〜……」

 好奇心はそこまでで、やはり体調が悪いみたいだ。

「ちょっとここに座ろうか」

中村くんを椅子に座らせる。

「後はこちらで診ますので、坂上先生は戻られて大丈夫ですよ。また報告します」
「……わかりました。中村、あのお兄さんは医者だから、ちょうど良かった。診てもらえ」

 あ、そうだった。私よりちゃんとした小児科医がいるじゃない。

「先生の旦那さん、お医者さんなの?」
「あぁ。横になった方が良さそうだな。その前に手を洗えるか?」

 エロモードがすっかり抜けて、真面目な医者の顔になった亮平を見て安心したのか、聖くんは出て行った。