「ボーッとしてるから、運んでやる。温めてやるから」

 えっ! それは困る! 絶対温めるだけじゃ終わらないじゃん!

「ダメ! それだけで終わるつもりないでしょう⁉︎ うちじゃ絶対ヤダからね!」
「……別に、そんなこと考えてない。……期待してるのか?」
「ち、違うよっ! ……ねえ、降ろして?」
「……肩も、脚も……髪も、頬も……唇も……全部冷たい」

 抱き上げたまま、髪に頬に唇に口づけてくる。亮平が……甘い? ううん。何か違う。
 
「ん……りょ、亮平どうしたの? なんかあった?」

 私は心配になって亮平の頬を手で覆い、目を覗き込む。
 何かあったのかな。仕事? それとも昨日の夜? 思い詰めたような目をしている。
 なんとか読み取ろうとすると、亮平が言った。

「話がある」

 なんとなく、いつ両親が帰ってくるかわからない自宅で聞く雰囲気ではなかった。
 そこで、藤田の家に場所を移すことにした。

 さすがに隣とは言え、ご近所さんに会うこともある。ショートパンツにブラトップでは心許ない。亮平には先に帰ってもらって、私は部屋からマキシ丈のシャツワンピを取ってきて羽織った。これなら誰かに会っても大丈夫。
 戸締りをして、家を出る。

 どうしたんだろう。なんか、真剣な顔してたよね? 話って……。

 ◇ ◇ ◇