『わかった。雅ちゃんのはなれに泊めてもらうよ』

 うーん。帰れなくなった。
 まあ、藤田の家に泊めてもらおうか。
 客間にお布団くらい引いてくれるだろう。亮平のせいなんだから。

 10分もかからずシャワーを終えた亮平が、念入りに歯を磨き出す。

「で? どうしたの? 体調悪いの? アルコール飲んだんじゃないんでしょ?」

 と歯磨きをしている亮平に話しかける。
 体調が悪いのならこのまま救急外来のある病院に行った方がいい。

「病気じゃない。別に体調も悪くなかった」
「じゃあ何があったの?」

 亮平は黙ったままタオルで髪をゴシゴシ乾かしながら、大きなため息を吐いた。

「……授業が終わって、廣澤が飯食いに行こうって言うから食いに行った。店の相談もされないし、おかしいとは思ったんだ」

 廣澤君とは、大学で学籍番号が前後のお友達だ。最近よく名前を耳にする。

「店に入ったらすぐに案内されて、そこにサッカー部の先輩2人と女が4人いた。…………合コンだったんだ」
「合コン」

 なんとなく、モヤモヤする。

「俺、そんなん聞いてないし興味もないから、帰るって言ったんだ。そうしたら廣澤が泣きついてきて『先輩にいい顔させてやってくれ!』って」

 なるほど……。
 亮平で合コンのレベル上げようとしたわけだな。