良かった。そう思ってくれたんなら大成功だよ。

「へぇ〜。《結衣子の部屋》健在だね。さすが、癒しの結衣子先生だ」
「《結衣子の部屋》? 結衣子先生?」

 あ、麗ちゃんにまだ言ってなかった。

「私、小学校の養護教諭なの。今は育休中。坂上先生……あ、聖くんのことね。坂上先生は職場の同僚でもあるの」
「保健室のこと、生徒がいつの間にか《結衣子の部屋》って呼びはじめてね。《結衣子の部屋》は生徒からも人気なんだ。体調不良だけでなく、悩み事の相談やちょっとした話し相手になってもらいたくて、皆んな結衣子先生に癒されに行くんだよ」
「うわ! それまさに結衣子さんの天職ですねー!」
「そうだね。結衣子も今の仕事は天職だね。でも、不純な動機なら亮平もだよね」
「な、なんで俺が不純なんだっ!」
「お前、結衣子のお父さんに言われて、人の役に立つ仕事を選んだのはいいとして。小児科を選んだのは結衣子が小学校の養護教諭だからだろ? 学校の近くでいずれ開業しようと――」
「え! そうだったの⁇」
「バ、バカヤロー! バラしやがって……」
「バカ亮平、相変わらずね! あんた、家が隣だったからストーカーにならなくて済んだけど、かなりヤバめだもんね。離れて住んでたら、確実に毎日そこの電柱の影に住みついてたんじゃない? それか結衣子の実家に毎日押し入ってたか――」