違うだろ!
 聖母のようなお前と、女豹の稲森だぞ!
 騙されてるんじゃないのか……。

「まあ、ちょっと強引なとこあるみたいだけど」

 そうだよ! 気づいてたのか!

「亮平……ずいぶん好かれてるみたいだったね?」

 な、なんだ? 上目遣いのジト目攻撃……。
 なんか疑ってる⁉︎
 ジワリと嫌な汗が背中を伝う。

「知らねーよ。指導手伝ってるだけだ。あいつは、誰にでも馴れ馴れしい。俺には迷惑以外の何物でもない!」
「フフフ……。わかってるよ。私は亮平のこと信用しているからね」

 そう言われると良心が痛む。俺が何かをしでかしたわけではないけど、隠していることはあるから……。

 しかし……稲森がウチに来る?
  やめてくれ。ここは俺の聖域だ。あんな奴が来たら穢れる。

 ……確かに、廣澤も呼べば、さっきの頼まれごとも解決する。

 渡りに船だけど……イヤだ。

 それに、稲森が来るなら……。

 はぁ……やっぱり黙っているのは俺の性に合わない。