「あのホテル、実は隠し通路や隠し扉がいくつもあるんですよね。あのホテルの初代創業者がからくり仕掛けが好きだったらしくて。まあ、この情報を知っているのは従業員だけなんですが」

雪は眠っている間に、その隠し扉や隠し通路を使って連れ去られたということである。何年も泊まっていたのに気付かなかった。雪の体が震え、呼吸が荒くなっていく。

「可愛い……。今度は僕だけを見てくださいよ。触れ合うことのできない推しじゃなくて、僕の方がいいですよね?ほら、推しにはしてもらえないことが僕にはしてあげられるんです」

雪の小刻みに震える体は新の腕の中に閉じ込められてしまう。それはまるで、頑丈な檻だ。雪は必死で彼の腕から逃げようとするものの、びくともしない。

「離して!」

「ダメじゃないですか。そんな風に暴れたら」

新は嬉しそうに笑い、雪の唇に自身の唇を強引に重ねた。