そんな気持ちを少しでも落ち着かせようと、雪は泊まるホテルのパンフレットを眺めることにした。赤い屋根に白い外壁が特徴的な可愛らしいホテルである。

「あのホテルマンさん、まだ働いてるのかな……」

雪の脳裏には推しではなく、一人のホテルマンの顔が浮かんだ。



推しのバースデーライブに参戦する際、雪が予約しているホテルは毎年変わらない。値段は少々高めだが、サービスがいいためそのホテル以外考えられないのだ。

新幹線で現地へと到着した雪は、まずはホテルに行き余計な荷物を置いていくことにした。ライブまでは時間がある。

赤い屋根に白い外壁と、まるでヨーロッパのお屋敷のような見た目をしたホテルを見ると、雪は「本当にこの県に来たんだ」と実感を覚えていく。

ホテルの大きな出入り口から中へと入ると、シャンデリアが吊るされた広いロビーが雪の目の前に現れる。そして、真紅の制服に身を包んだホテルマンが近付いてきた。