袖にしても袖にしても折れない志はかっこよくも映る。


「こんな呪い、すぐ解いてやる」


ミカエルはぽかんとするアンの右頬を優しく撫でて、壁を背にするアンの鼻先に鼻先を寄せた。息のかかる距離でミカエルが囁くと、アンは息が止まった。


「絶対、俺の女にしてやるから。待ってろ」

「俺の女ならない、待たない」

「ハハッ、好きなだけ言ってろ。無理だから」


アンの右頬におやすみのキスを残して、ミカエルは部屋を出て行った。アンは壁に背中を預けてずるずると座り込む。


「ハァーーー耐えたーーこれでやっと平穏な推し事だけで学校ライフが満喫……できる?」


やっと息を再開したアンだったが、推しカプの供給でいっぱいだったはずの胸は、今ではミカエルの声で、いっぱいだった。右頬は初めてキスされたのかと思うくらいに熱くて、異常を知らせている。


(俺様キャラとか、好きじゃないの私は!)


アンはその夜ベッドで、俺様の足ドンからのしょんぼり、アップダウンのギャップ萌え悪くない。などと思っては首を振った。