今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


アンは内心ほくそ笑んだが、ミカエルはこめかみをピクピク痙攣させる。


(綺麗な顔の人が怒ると、身が切れるくらい寒いよね……)


ミカエルはお美しくて眼福ではあるが、非常に怒っておられてアンは身が竦んだ。彼の魔法が怒りで暴走したら、アンは逃げ場がない。断罪死刑ルートの前に普通に死ぬかもという身の危険を感じた。


「呪い魔法の解き方は?!」

「言うわけないでしょ!」

「言え!」

「イヤ!!」


長い足を壁にガンガン蹴って、ミカエルは怒鳴り散らした。だがアンは両耳を両手で塞いでそっぽ向いて耐えた。この右頬が治れば、断罪ルート復活だ。アンだって必死である。


「アンが自分で呪い魔法かけたのか?!」

「いえっす!」

「お前、そんなに俺の婚約者になるの嫌かよ!」

「私はミカエルの思い通りにならないの!」

「この女、腹立つ!」


しばらく無為な言い合いが続いたが、ミカエルが足を下してしょんぼり俯いてしまった。


「俺がどんなに努力して5年も留学して……どんなに今日を待ってたか……」

(あ、泣いちゃう?)