求め続けた女を前にして、こんな凡庸なことしか言えないだなんて。ミカエルは自分がそんな凡庸な男だとは知らなかった。歯に衣着せぬミカエルはさらに率直な感想を述べる。



「キスしたい」

「な!何言ってんの?!」

「ハハッあいかわらず初心だな。しょうがないからお前に合わせて、ゆっくりしてやるよ」


ミカエルはアンの爛れた右頬に、以前と変わらずためらいなく挨拶のキスをして爽快な笑顔で微笑んだ。

この世の全てが彼の存在を祝福するがごとく、その真ん中で彼は君臨する。


ご機嫌なミカエルの笑顔が、5年前よりも強烈に輝かしくてアンは立ち眩みしそうだった。



(男の子って5年でこんなに変わるの?!この前まで幼かったのに、今じゃもう全部、男!)