あまりにあっさり流されてアンは自分が見たものは幻だったのではと思わされるほどの見事なスルーである。ミカエルはどこまで自信があるんだ。
「ほんと?」
アンが頭ぐちゃぐちゃになって混乱で猫目の端っこからぽろっと一粒涙が落ちた。
ミカエルはふっと笑って涙をべろっと舌でなめとってしまう。潤んだ紅の猫目がミカエルを見上げて、腰がゾワゾワそそられた。
「俺、アンとしかキスしたことない。意味わかるか?」
「どういう意味?」
ミカエルが瑞々しさに満ち満ちた笑みで、アンのでこぼこの右頬を優しく撫でた。
「女抱くの、初めてってこと」
アンの右頬を撫でて、右頬にキスを贈るミカエルは、処女ならぬ童貞だという。
「本当に?」
「本当に」
「女の子に誘われたことあるでしょ?」
「数えきれないに決まってるだろ。全員に鏡見てから言えって言ってやった」
「呪われても文句言えないよ?」
アンはびっくりし過ぎて涙が止まって一瞬宇宙が見えた。
「そ、そんな全世界の女を魅了する姿かたちで童貞?今まで一度も?私以外に触ったことがない?まさかの一途?」
「ハハッ、だから一途だって言ってるだろ?」



