今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


ミカエルがアンを抱き締めると、首筋に唇を寄せて彼女の香りを大いに嗅いだ。両腕に閉じ込めて、もう二度と離したくなかった。


(狡い……先に裏切ったくせに)


誰も信じてくれなかった空間に斬り込んできて、まっすぐアンを抱き締めるミカエルの頼もしさに、アンは猫目の目尻が下がってしまう。


鼻がツンと痛くて、唾を飲み込んでいないと泣きそうだった。


「……私、やってないわ」


アンがこぼしたか細い、助けを求める声にミカエルの腰が疼く。愛しい子に頼られるのはこんなに心地よい。


「わかってる」


ミカエルは、アンの耳元で優しい声を出してアンをぎゅうと抱き締めてくれた。


逃げて、逃げて、逃げ続けたミカエルの腕の中なのに。ここはどこよりも安心できる場所だった。


「俺に任せろ」