ミカエルがアンを抱き締めると、首筋に唇を寄せて彼女の香りを大いに嗅いだ。両腕に閉じ込めて、もう二度と離したくなかった。
(狡い……先に裏切ったくせに)
誰も信じてくれなかった空間に斬り込んできて、まっすぐアンを抱き締めるミカエルの頼もしさに、アンは猫目の目尻が下がってしまう。
鼻がツンと痛くて、唾を飲み込んでいないと泣きそうだった。
「……私、やってないわ」
アンがこぼしたか細い、助けを求める声にミカエルの腰が疼く。愛しい子に頼られるのはこんなに心地よい。
「わかってる」
ミカエルは、アンの耳元で優しい声を出してアンをぎゅうと抱き締めてくれた。
逃げて、逃げて、逃げ続けたミカエルの腕の中なのに。ここはどこよりも安心できる場所だった。
「俺に任せろ」



