自室でソファに座って、アンはミカエルからの手紙を読んだ。簡潔だった。


『渡したいものがある。学年末パーティには出てこい』


偉そうな文面から、ミカエルの怒った顔が見える。昨夜指輪から聞こえた声はもっと弱くて可愛らしいものだったので、違和感がある。


アンはため息をついて天井を仰いだ。


(婚約はしてないんだから。ミカエルに断罪される要素はもうない……

オタク根性でミカエルとヘレナのハッピースチルを拝みに行くか)


先日、手紙とは別で送りつけられたドレスもクローゼットに収納されている。


恋心は苦しいが、アンはこれからもこの世界で生きていくのだ。王太子のミカエルがいつしか王となって、妻のヘレナと共に治める国で暮らし続ける。


どうせいつまでも目を逸らせないならば、元カレの結婚式に出る気持ちで行こう。


「渡すものって、何だろう……まさか引導?ハハッ、笑えない」


アンは手紙を天井に向けて紙を光に透かした。