珍しい組み合わせに、アンの胸がドンドンと危険信号を鳴らす。


「俺に任せとけばいいんだよ」

(あ、これ横恋慕ルートの……キス、シーン)


ミカエルが弱ったヘレナに保健室でぐっと迫ってキスを奪ってしまうイベントは、横恋慕ルートでは多発する。


アンは胸が張り裂けそうな勢いで心臓が鳴っているのに、その場から動けなくなってしまった。


白いカーテンの向こうでは、アンがよく知るキススチルが展開されていることがわかった。


つい先日、ミカエルの想いをアンが受け入れて、アンもミカエルへの恋を覚悟した。


アンが知る乙女ゲーの中のミカエルではなく、アンを想い続けてくれていたミカエルなら信じられると思ったのに。


絶望がむくむく育った。


(やっぱり、信じちゃダメだったんだ)


保健室のベッドが二人の重みで軋む音がして、衣擦れの音とアンの想い人の声が聞こえる。


「痛くないから。じっとしてろ」

(ありえな……くない……だって横恋慕の達人ミカエル……信じた私が、バカだった)