でも、アンはミカエルに惹かれているなんて認めるわけにはいかなかった。
(だって、ミカエルは右向いて、左を向く一瞬の間に、ヘレナに恋するんだから……)
アンはミカエルが優しく触れるブロンドの髪をひったくり、ビシッと仕切り直す。空気となっていたヘレナの両肩を背後から掴んで、ミカエルの前に突き出した。
「さあ!踊って二人とも!」
「一曲だけだぞ」
ミカエルが優雅に一部の隙も無く、完璧に差し出した手に導かれたヘレナは手を重ねた。
そこから一曲、ミカエルはへたくそなヘレナを見事に踊らせた。ヘレナのダンスが下手だなんて、誰にもわからないレベルだった。
「あ、ありがとうございましたミカエル様!わ、私自分が上手くなったんじゃって錯覚しました!天才ですね!」
「あたり前だ」
(あ、あれれれ?なんかおかしいな)
前世で見たミカエル×ヘレナの美しい限りを極めたダンススチルを思い出して胸が熱く……なると思ったのに、アンはいまいちテンションが上がらなかった。
それどころか、胸がつかえるような違和感がモヤッと出現しただけだった。



