あの女の声で……、

あの女の……、

ニコッとした呑気な顔だった。

……殺す。必ず殺す。分かっている。

今1度本来の目的を頭に叩き込みながらも俺は震える唇をそっと開いた。

「すみません…まだ……」

咄嗟に……

俺は嘘をつくことを選んでしまった。

しかしすぐに総長の威圧的な声が降ってくる。

「チンたらするな、と言っただろ」

「分かってます。俺が必ず…あの女を殺します」

……もちろん。

俺は殺すことを諦めた訳じゃない。

幹部への座も、まだ諦めてはいない。

だってこれは俺がのし上がる大きなチャンスなんだ。

棒には振らない。

ただこれは……、少し先延ばしにしただけだ。

まるで言い訳のように、心の中でそう唱えた俺は、ゆっくりと顔を上げて総長を見つめた。

そして薄々気になっていたことを言葉を出す。

「あの、もし教えて頂けるのなら、どうしてこの……綾瀬澪奈という女を殺す必要があるのでしょうか」

次の瞬間。
ギロリ、と総長の視線が俺に食いつく。