「柚季さん…、意外と可愛いとこあるんですねぇ」

「うっせ」

「じゃあ邪魔者は帰りますね」

手をヒラヒラと振りながら雨が帰っていくのを見届ける。

部屋に2人っきりになっても柚季はまだ私の手を掴んでいて離さない。

「柚季……っ?」

呼び掛けてみると照れたように口元を手の甲を当て言った。

「あんま他の男に触らせんなよ……妬く。」

やっ、妬く……??

思いもよらない言葉に感情が乱れる。

…どうしよう。

やっぱりかっこいい。かっこよすぎます…

さっきなら雨との会話で柚季のこといっぱい思い出してたからか、こうしていざ目の前に来られると、もう心臓が大爆発しそう……。

こんな私に……ヤキモチなんて…。

感情が私の中で音を立てずにフツフツと高ぶっていく。

ーーギュッ……

気付かぬ間に気持ちが先走り、私はとっさに柚季の服を掴んだ。

「澪奈?」

ふと思う。
今が…チャンスかもしれない、と。

そう思ったらこのチャンスを逃がすまいと、コテン、と柚季の厚い胸板におでこを引っ付けた。