忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「ただいま」

「おかえり」

 帰宅すると、直充がリビングから顔を出した。

「どうだった?」

「人多かった」

「感想それ?」

「あと、チラシいっぱいもらった」

「お前、断れなかっただろ」

「何で分かるの」

「分かるよ」

「群司にも言われた」

「群司?」

「高校の友達。同じ大学受かったって前に話したでしょ」

「ああ、同じ学科の」

「うん」

「一緒だったんだ」

「入学式だから」

「そっか」

 直充が頷く。

「友達いるならよかったじゃん」

「うん」

 知らない人ばかりの大学で、群司が隣にいる。

 それは亜美が思っていた以上に心強かった。

「お兄ちゃん」

「ん?」

「……軽音って、もう活動してる?」

「してるんじゃない?」

「そうなんだ」

「何、興味あるの?」

「違う」

「じゃあ何で聞いたんだよ」

「ちょっと気になっただけ」

「ふうん」

「…………」

「入りたいなら見に来れば?」

「だから違うって」

「はいはい」

 直充はそれ以上気にした様子もなく、テレビへ視線を戻した。

 亜美は少しだけほっとした。

 兄には、まだ言っていない。

 大学見学の日に出会った人を、ずっと好きなこと。

 その人に会いたくて、誠星大学を目指したことも。

 幸也への気持ちは、丈だけが知っている。

「…………」

 会いたい。

 今度こそ、ちゃんと会いたい。

 もっと話したい。

 高校生だった自分ではなく。

 同じ大学の学生として。