忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「幸也に会えるね」

「……うん」

 その名前を聞いただけで、頬が少し熱くなる。

「嬉しそう」

「嬉しいもん」

「そっか」

「今度はちゃんと、もっと仲良くなりたい」

「…………」

「それで」

「うん」

「好きになってもらえたらいいな」

 丈は、ほんの一瞬だけ何も言わなかった。

「先生?」

「ん?」

「……前に、キスのこと聞いたの覚えてる?」

「…………」

 今度は丈が黙った。

「覚えてるよ」

「好きだったら、したくなるのって聞いたやつ」

「うん」

「最近、塾でその話よく聞くから」

「キス?」

「うん」

「へえ」

「それで……ちょっと考えた」

「何を?」

「もし、幸也先輩と付き合えたらって」

「…………」

「まだ全然、そんなの決まってないけど」

「うん」

「でも」

 今日、誠星大学に受かった。

 幸也と同じ場所へ行けることが決まった。

 だから急に、想像の中だけだった未来がほんの少し近くなった気がした。

「もし本当に付き合えたら」

「うん」

「その先のこと」

 亜美は丈を見る。

「私、何にも知らない」

「…………」

「だから」

「うん」

「そのときになって、何も分からないの……嫌だなって」

 丈は何も言わず、亜美を見ている。

 亜美はそのまま続けた。

「先生」

「うん」

「キスも、教えてくれる?」